露天風呂にて“全身泥塗りの男に”遭遇(熊本県) 全国「濃すぎる温泉」体験記(9)

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 「濃すぎる温泉」巡り。ここ熊本の温泉では、記者のカラダには、どんな変化が起きたのだろうか。

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■お兄ちゃんも色男に

 今回は、阿蘇五岳のひとつ烏帽子(えぼし)岳の中腹にある地獄温泉である。到着した清風荘では、明治中期に建てられたという2階建ての木造建築に迎えられ、心が癒される。目的は「すずめの湯」という泥温泉なのだが、別府温泉保養ランドでのB級感とはどう違うのだろうか。

 宿から少し離れて「すずめの湯」はあった。内湯は見た目が甘酒のようで、また硫黄臭がするが、あまりドロドロしていない。続いて露天風呂。ここは混浴である。敷石を伝っていくと、左手に湯殿があって木でふたつに仕切られている。その向かいには、右手に小さく6つに仕切られた湯殿がある。そのひとつに記者はお邪魔した。

 内湯より臭く、色も肌触りも濃い。ところどころで弾けている泡は、大分県の七里田温泉よりも大きい。身体がポカポカになってから、入口から見て左手にあった湯殿に移ったが、思わず叫んでしまった。「熱い!」。

 猪鍋に鹿肉、鴨肉、という豪勢なタ食後、河津謙二副社長が語ってくれた。

「すずめの湯はpH2・8の単純酸性硫黄温泉で、含まれる硫黄成分は肌に吸収されやすく、免疫抑制効果があって、リューマチやアトピーに効くとされています。温泉とともに湧き出る硫化水素ガスも、慢性の気管支疾患によいとされます。加温や加水なしの100%源泉かけ流しです」

 翌朝、露天風呂を再訪して仰天した。さすがは地獄温泉、暗黒舞踏のステージさながらに、全身泥塗りの男が現れたのだ。だが、いかにして? 地元のおばあちゃんに聞くと、

「泥は浴槽の隅っこにあるよ。こぼれちゃうから、うまくすくわんといけん。泥を塗るとキレイになる。お兄ちゃんも色男になるよ」

 はたして記者は色男になっただろうか。手放せなかった保湿クリームが旅行中は不要だったから、美肌効果はあったのか。ジーンズやTシャツから硫黄臭が抜けず、しばらくは、おならまで硫黄臭かったのには閉口したが、これほど温泉成分の“漬物”になった以上、ジワジワと色男になるはずだと期待している。

■地獄温泉 清風荘

(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)
 1泊2食付13110円~ 日帰り入浴600円
(電話)0967-67-0005

「特集 2分以上は浸かれない? 全国『濃すぎる温泉』体験記」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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