「ジャッキー・チェン」もお忍びで…“泥温泉”(大分県) 全国「濃すぎる温泉」体験記(7)

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 なんでも、水の還元作用が強くなり、これから2月ごろまでは、温泉の効能が最も高い時期らしい。そんな時期に相応しい全国の「濃すぎる温泉」を、読者に先がけ探訪していく。次なる場所は……。

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別府温泉保養ランド(大分県)

■草が足にからみつく泥沼

 地熱資源が豊富な九州にきた。まずは日本屈指の温泉街、別府温泉を訪れたが、目指すはふつうの温泉宿ではなく、別府温泉保養ランドの“泥温泉”である。

 チェックインし、渡り廊下をしばらく歩くと脱衣所に着いた。そこから望める内湯は乳白色で、硫黄臭がするが、もはや記者は驚かない。だが、細い通路を抜けると、日本離れした光景に息を呑んだ。白からグレーに染まった色合い、広さ40坪におよぶ浴槽。お湯の色がエメラルド色でないことを除けば、映画で見たヨーロッパの温泉のようだ。

 滑らないように気をつけながら石段を降りるが、お湯が濁りすぎていて、足元がまるで見えない。なんとか体を沈めて底の泥をつかむと鉛色で、意外とサラサラしている。混浴だが、真ん中に境界線として竹筒が渡されている。うろちょろするうちに、場所によって熱さが違うことに気づいた。また、方々に立ち入り禁止の看板が貼られている。

 奥にある別の浴槽に入る。慎重に足を踏み入れたのに転びそうになったのは、底がとてもやわらかいからだ。文字通りの泥沼で、草が足にからみつき、泥をつかむとドロドロで、虫の死骸も混じっている。ぶくぶくと泡が立ち、尻餅をついたらべっとりと泥がついた。

 広報を担当する福田悠希さん(29)に聞いた。

「鉄、マグネシウム、メタケイ酸、明礬(みょうばん)、ミネラルなどを含むこの温泉は、どんな傷にも効くということで格闘家御用達で、撮影で負った傷を癒しにジャッキー・チェンがお忍びで来たこともあります。抗酸化作用によって、アトピーなどの皮膚病や糖尿病にも効能があります。泥湯は39度くらいですが、泥が温度を閉じ込めるので温かくなるんです。ぶくぶくいうのは地熱。場所によって60度ほどになるので、立ち入り禁止の場所を設けています」

 温泉というジャンルを超越した、テーマパークのB級アトラクションのようで、硫黄臭が取り返しがつかないほど体に染み込む、という後先を考えさえしなければ、本当に楽しい。

■別府温泉保養ランド(大分県別府市)
 1泊2食付7500円~ 日帰り入浴1100円
(電話)0977-66-2221

「特集 2分以上は浸かれない? 全国『濃すぎる温泉』体験記」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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