手数料“価格破壊”で見直される「外貨預金」

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 今回は、“外貨は怖い”という方への入門講座だ。

 外貨は常に為替リスクを伴う。円より利率が高く、元本が保証されている外貨定期預金も、その通貨に対して円高になれば、たちまち円換算で元本割れに陥る。

 一般に“外貨”といえば、「外貨預金」「外貨MMF」「FX(外国為替証拠金取引)」があるが、とりわけハイリスクハイリターンのイメージが強いFXでは、“大儲けした”という声がある一方、“100万円がたちまち消えた”などという怖い話も聞こえてくる。

 日本で生活する限り、円高だろうが円安だろうが関係ない――とタカを括っている堅実派も多かろう。だが、銀座などで“爆買い”する外国人を見て、漠然とした不安を感じないだろうか。そう、“爆買い”は円安の所産、つまりあなたがせっせと貯めている“円”が知らず知らずに価値を落としている証なのである。

「先行きが見通せない日本経済の将来に備えて、個人資産のうちある程度の比率、たとえば全資産の3分の1などを外貨で保有するのは、有効な資産防衛と言えます」

 と説くのは、経済ジャーナリストの田部正博氏。

 とはいえ、円高になりそうなときにわざわざ円を売りたくはない。しかし、

「為替の動きを読み切ることは難しいですが、今月16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、金利引き上げに踏み切るとの観測が高まっており、現在は円安基調にあると言えます」(同)

 では、具体的に何から始めればいいのか。

■レバレッジ1倍FX

 一番わかりやすいのは外貨預金である。

 外貨預金のネックは、何と言っても“手数料”。一般に、大手都銀の窓口では1ドル買う際に1円、円に戻すのにさらに1円の手数料を取られる。これでは、いくら金利が高くても割に合わない。

 ところが、近年、ネット銀行を中心に、為替手数料の“価格破壊”が起きているのだ。

 例えば、住信SBIネット銀行だと1ドルあたり15銭。ジャパンネット銀行に至っては1ドルあたりわずか5銭だ。ユーロや豪ドルなど他の通貨に関しても価格破壊が進んでいる。

 外貨MMFは、外貨預金より手数料が安く、利回りも良いので人気である。ただ、これまで非課税だった為替差益が来年から課税対象になるので注意が必要だ。

 FXも、堅実派の入門者に無縁ではない。

「取引手数料が無料(但し売値と買値に若干の価格差がある)というのがメリットです。レバレッジを1倍に設定し、外貨預金のような感覚で使っているお客様もいらっしゃいます」(住信SBIネット銀行)

 そして、海外旅行好きはなおさら外貨預金を持っておくとお得なことがある。

「通常、海外でクレジットカードを使うと、事務手数料1・63%を加えて円預金から決済されます。しかし、SBIカード(クレジットカード)で外貨預金口座から直接決済すると、事務手数料が掛からず、ドルを買った際の手数料15銭だけで済みます。レート面でも有利です」(同)

 1000ドルの買い物をした場合、前者の手数料が約2000円に対して、後者は150円で済む。

 来年には、外貨預金から直接決済できるデビットカードも発行するのだとか。なお、同様の機能を備えたデビットカードは、ソニー銀行でも扱う予定だ。

 まずは小遣い程度からスタートを。

週刊新潮 2015年12月17日号掲載

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