巨大なめこと中庸の湯(長野県) 全国「濃すぎる温泉」体験記(6)

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 全国の「濃すぎる温泉」を巡る旅。そろそろ温泉に“浸かり疲れ”てきた記者のカラダには、ここ「乗鞍高原温泉」の湯が心地よい……。

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 信州である。松本から松本電鉄上高地線で新島々(しんしましま)駅に行き、バスに揺られて50分弱、標高1400メートル余りの乗鞍高原温泉に向かった。山栄荘で出された夕食で、なめこの大きさに驚いた。主人の齋藤三喜夫さん(64)が語り出した。

「市販のなめこが小さすぎるだよ。きのこは自分で採ってきた。この温泉で一番効くのは皮膚病だ。有名な白骨温泉よりも酸性が強くて、敏感な人はピリピリするだ。硫黄も入っているから、玄関に入っただけで臭いという人もいるだ」

 ピリピリって、pH1・2の酸度を誇る秋田県の玉川温泉の時のような電気ショックをまた味わうのなら恐ろしいが、全国一の硫黄濃度の群馬県の万座温泉から10円玉の臭いの長野県の加賀井温泉まで、強烈な臭いをかぎすぎた記者の鼻には、なんの臭いも感じられない。

 脱衣所に入ると懐かしの硫黄臭がしたが、万座温泉ほどではない。浴室は床も壁も木で、山小屋のような野趣がある。お湯の色は白いが万座よりは薄い。源泉かけ流しのお湯は41度。適温だ。浴槽に浸かって、ピリピリがいつくるかと恐る恐る待ち構えたが来なかった。安心して露天風呂に移り、星空を堪能した。

 この温泉は記者が体験した温泉をブレンドしたように中庸だ。しかし、過激なお湯に浸かりすぎて疲れ気味だった記者の体と心には、適度な濃さだった。

■信州・乗鞍高原温泉 山栄荘

(長野県松本市)
 1泊2食付8450円~ 日帰り入浴500円
(電話)0263-93-2715

「特集 2分以上は浸かれない? 全国『濃すぎる温泉』体験記」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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