「東京高検検事長」突如勇退で見えた次の「検事総長」

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 定年を迎える前の人事に、霞が関では様々な“送辞”が飛び交っている。

 関東甲信越と静岡の1都10県を管轄する東京高等検察庁。そのトップを務める渡辺恵一検事長(61)が、12月10日付で辞職するのである。

「就任したのは昨年7月ですが、宴席でお酒を控えている場面もありましてね。定年まで2年残しての勇退だから、体調不良、ガン闘病説まで流れましたが、これで渡辺さんの検事総長の目は消えました」(法務省関係者)

 全国約1万2000人の検察職員を束ねる最上位職が、最高検察庁の検事総長。1964年以降、東京高検検事長から抜擢されるのが既定路線なのだ。が、トップへ立つには、もうひとつの“資格”が必要とされる。

「歴代検事総長の多くが法務事務次官経験者で、煉瓦造りの法務省勤務のエリートを指す『赤レンガ派』が重用されるのです」(同)

 当の渡辺氏は東京地検特捜部を経て、東京高検刑事部長、同次席検事などを歴任。94年の自民党・中村喜四郎代議士と鹿島のゼネコン汚職事件では、26年ぶりに国会議員へ「あっせん収賄罪」を適用した立役者として、捜査の陣頭に立ってきた「現場派」なのである。

 2010年の大阪地検の証拠改竄事件を受けて、「現場派」の先輩である笠間治雄氏が検事総長に就いたのは異例のこと。その後は、“赤レンガ派”の検事総長が2代続いている。

「渡辺氏の在任中、古巣の特捜部が目立った働きをすれば検事総長の可能性もあったと思いますが、司法試験問題の漏えいや東芝不正会計の一件でも存在感を発揮できなかった。後任の検事長は、法務事務次官を務めた札幌高検検事長の西川克行氏(61)ですから、次期検事総長も決まったようなものですね」(司法記者)

 下々には窺い知れぬ“派閥”の原理があるようだが、地に墜ちた検察の信頼回復は、一体いつになるのやら。

週刊新潮 2015年12月17日号掲載

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