作家が映画監督を殴る「日本は平和」 野坂昭如夫人が語る“大島渚殴打事件”

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 12月9日に心不全でこの世を去った作家の野坂昭如さん。酒豪としても知られる野坂さんだが1990年には映画監督の故・大島渚さんの主催したパーティーの壇上で、酒に酔い大島さんを殴打。大島さんもハンドマイクで応戦し、後々まで語り継がれる大騒動となった“大島渚殴打事件”も起こしている。「週刊新潮」(12月17日発売号)にて、愛妻の暘子(ようこ)さん(74)がインタビューに応え、この一件を野坂さん本人がどう語っていたのかを明かした。

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「プレイボーイ宣言」も

 野坂のパンチは格好よかったですけど、大島さんはマイクで殴り返してはダメですよ。でも、60歳と58歳になって、スピーチの順番という些細なことで腹を立て、人前で少年のように殴り合える男同士って羨ましい。それだけで魅力的です。

 翌朝、朝刊を読もうとしたら見当たらず、変だなあと思っていると、間もなくパーティーの場面がテレビで何回も出てきて、そこで初めて知りました。「昨日どうしたの?」と聞いたら、野坂は気まずそうに「うふふ」ってはぐらかして、そのまま逃げて行きました。たまたま世間の目に触れるところでやってしまったから大騒ぎになっただけで、あくまで2人の間では遊びだったのだと思います。

 あのシーンはこれまで、事あるごとに繰り返しテレビで流されてきて、もちろん野坂本人も見ていますが、感想はいつも一言、

「日本は平和だな」

 それだけでした。

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 無頼なイメージのある野坂さんだが、奥さまに殴り合いをしたことを知られるのはバツが悪かったようだ。作家と映画監督が酒に酔って殴り合った、そんなニュースがテレビで何度も流れる日本は、戦時の混乱を泥水をすすりながら生き抜いた野坂さんには、平和な世の中になったものだ、とみえたのだろう。

「週刊新潮」(12月17日発売号)では、「四畳半裁判」や、田中角栄に挑んだ選挙の思い出なども語った。

週刊新潮 2015年12月24日号掲載

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