ガッテンできない“明治の文豪”志賀直哉

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 立川志の輔師匠の司会で人気のNHK生活情報バラエティ『ためしてガッテン』。11月25日の放送は「酒かすパワー大全開!」と、かす漬けの魅力を紹介したのだが、いささかガッテンできないところが――。

 番組では、かす漬けのルーツを求め奈良に向かうのだが、ナレーションの生野文治アナは、こう紹介する。

「明治時代の文豪、志賀直哉が10年におよぶ奈良での生活の中で、とんでもない言葉を残します。奈良に美味い物なし!」

 あれ、志賀直哉って明治の文豪だったっけ? 確かに志賀は明治生まれではあるけれど、大正デモクラシーを背景にした「白樺派」を代表する作家。「城の崎にて」は大正6年、代表作「暗夜行路」は大正から昭和にかけての作品なのだが、

「白樺派を代表する小説家と位置づけられているため、明治の文豪として紹介しました」(NHK広報局)

 とガッテンできぬお答え。

 さらに番組で紹介された随筆「奈良」は昭和13年に発表され、“奈良に……”とは言っていないのだ。

〈食ひものはうまい物のない所だ〉とは言いつつも〈此所では菓子が比較的ましなのではないかと思ふ〉とあり、〈送つてやると、大概喜ばれる〉と贈り物にしたほどお気に入り。しかし、

「“奈良に……”という言葉は、奈良県内も含めて広く使われており、その現状を変えようと努力する地元の人々に出演いただくに当たり、この言葉を紹介しました」(同)

 奈良の方々、これでガッテンできますか?

週刊新潮 2015年12月10日号掲載

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