宗教に近いような……著書『断薬セラピー』の真贋判定

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 世にあふれる“健康本”の中には、“アレを飲みなさいコレをしなさい”の類が多くある。しかし今回紹介する、健康を保つためには高額な費用はおろか、薬さえ必要ないと言い切る“断薬健康法”なるものもある。

『断薬セラピー』を出版したのは、国際感食協会代表理事で、薬剤師の宇多川久美子氏だ。

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『断薬セラピー』の真贋判定

〈この本は、「薬は必要のないものである」「薬があなたの健康を害している」という事実をお伝えすることで、皆さんが「断薬」を実行する際のサポートとなるように執筆しました〉

 と宣言。脳腫瘍を患いながら抗がん剤を拒否し、食事に気を遣うことで元気に生活する42歳の男性や、豆類を多く摂取することで前立腺がんが治ったという68歳男性の症例なども掲載している。

 薬に頼るのではなく、免疫力や自然治癒力を高めるように生活習慣を改めるべきだとの主張なのだ。

 しかし、おおたけ消化器内科クリニックの大竹真一郎院長はこう批判する。

「生活習慣の改善によって、がんを治すことは不可能です。少なくとも、科学的、医学的根拠はありません。医者は常に、その薬のメリット、デメリットを勘案しています。デメリットを上回るメリットがある場合に薬を処方する。例えば、糖尿病の初期に、副作用があってもインシュリンを投与するのは、失明などの将来的な合併症を予防できるからです。なんでもかんでも使ってはダメというのは理解に苦しみます」

 健康法というよりは、どちらかと言えば、“信じる者は救われる”的な宗教に近いのかもしれない。

 さて、宇多川氏はどう答えるか。

「私が言いたいのは、がんをはじめ病気は生活習慣の乱れが原因となっているので、それを正すのが先決で薬に頼るべきではないということです」

「特集 巷にはびこる『怪しい健康法』の真贋判定」

週刊新潮 2015年12月3日号掲載

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