ついに「軍区再編」のカードを切る「習近平」

国際 中国

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 米軍の爆撃機が接近飛行、いよいよ南沙諸島での米中間の緊張が高まる――かに見えた矢先、パリで起こった同時多発テロ事件。注目が一気に欧州と中東に向けられる中、習近平国家主席が軍改革をぶち上げていた。

「11月27日、人民解放軍の機関紙が報じたところでは、習近平が現在の7大軍区を統合、新たに4つの“戦区”に再編する方針を表明しました。230万人の兵力のうち非戦闘部隊を中心に30万人を削減、2020年までに軍改革を終えるとのことで、軍の近代化が目的だといいます」(国際部記者)

 瀋陽、蘭州、済南の3軍区を廃止し、残る軍区を中心に東西南北4戦区に改めるこの軍改革は50年代以来の大規模なものという。拓殖大学教授の富坂聰氏は言う。

「以前は軍は〈聖域〉と見なされていましたが、習氏は“反腐敗運動”を掲げて権力基盤を固めてきました。昨年6月には徐才厚氏、今年に入って郭伯雄氏と制服組トップを相次いで粛清しており、すでに対抗勢力もありません」

 かつて力のあった“軍閥”はすでに力を失い、習近平の軍部掌握は着々と進んでいるというのだ。

「これで軍部利権の再配分も視野に入ってきます」

 と言うのは軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏。

「今回の改革では陸海空軍と戦略ミサイル部隊の4軍の指揮系統の一本化と、それらを統括する“統合作戦指揮部”の創設も含まれているようです。江沢民氏が20年来握ってきた軍部人事を掌握すれば、軍部全体が掌の上です」

 加えて、“クーデタ潰し”の狙いもあるのではという。

「廃止される瀋陽は北朝鮮に接する東北部にあり、徐才厚氏の出身軍区。核ミサイル基地を擁し、強大な兵力を持つのですが、北京にも近く、これまでも折に触れてクーデタの噂が出たいわく付きの軍区です。また、蘭州は“西北の狼”と呼ばれた郭伯雄氏の出身軍区で、やはり核基地があると言われています」(同)

 経済に軍事に打つ手を止めぬ習近平。未来に目算があるからか、背後に何かが迫っているのか――。

週刊新潮 2015年12月10日号掲載

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