「JX」「東燃」統合でいよいよ拡がる「GS」空白域

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 わが国でも、難民問題が深刻化している。ただし、難民は難民でもこちらはガソリンスタンド(GS)難民。石油元売り企業の統合で、さらなる増加が危惧されているという。

 11月12日、出光興産と昭和シェル石油との対等合併が発表された。その4日後、今度は業界最大手のJXホールディングスと東燃ゼネラル石油との経営統合が明らかになったのである。この統合が実現すれば、売上高が約14兆3000億円となり、市場シェア約50%の巨大石油元売り企業が誕生する。経済誌記者の解説では、

「再編の目的は、経営基盤の強化。つまり、生き残りのためです。長引く原油価格の下落や、エコカーの増加による落ち込み、そして再生エネルギーなどの普及で、各社とも経営は苦しい。9月中間決算は、JXでさえ初めて449億円の赤字でしたからね」

 80年代には20社あった石油元売りも、相次ぐ再編でコスモエネルギーHDを加えた3社体制へ突入した。

「これでGS過疎地の増加に拍車がかかるのは間違いないでしょう」

 こう語るのは、業界紙記者だ。

「資源エネルギー庁石油流通課によると、15年3月末時点で全国のGSは3万3510件。20年前に比べると半減している。さらに、GSが3件以下の市町村は今年3月末で283で、全体の16%に該当します」

 また、高速道路でも“GS空白区”が増加しているという。国土交通省道路局高速道路課によれば、

「目下、高速道路のサービスエリア等に併設するGSは、全国で215件。10年前の民営化時と比べ数はさほど減っていませんが、高速道路の延長などが原因で、100キロ以上GSのない空白区が全国に83カ所もあるのです」

 JXの広報部に対策を聞くと、

「GSの減少には危機感を抱いていますが、一民間企業の努力だけで解決するのは難しい。今後は、関係省庁などと連携を図り改善に取り組んで行きたいと考えております」

 即効力のある“難民救済”策は望めないのである。

週刊新潮 2015年12月3日号掲載

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