東京で7カ所の同時多発テロなら警察は対処できるか?

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 もしも、わが国の首都、東京で、「イスラム国」が同時多発テロを起こした場合、警察が対処に当たるほかない。しかし、パリと同様に、それが7カ所にも広がったとすると、果たして、人員、装備などの備えは十分にできているのだろうか。

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警視庁

 ハイジャックなどの重大事件に備え、1996年、警察庁は、8都道府県警察(北海道、警視庁、千葉、神奈川、愛知、大阪、福岡、沖縄)に、SAT(特殊急襲部隊)を設置した。総勢300名の隊員で編成され、普通の警察官では扱えないサブマシンガンや自動小銃、狙撃用ライフルなどを装備し、防弾仕様のヘリコプターなどで機動的に作戦を展開することもできるという。

 警視庁公安部のOBによれば、

「もし、同時多発テロが発生すれば、中核として動くのが、“SAT”です。そこへ、応援として機動隊が駆り出される。例えば、パリと同じように金曜日の夜9時過ぎ、都内の国立競技場や劇場など7カ所で爆破、銃撃事件があったと想定します。その時間ですと、日勤の機動隊員はすでに帰宅し、宿直担当は国会や大使館の警備に当たっているため、まず、突発的な事件に備えて待機する五十数名の機動隊員が出動することになります」

 指揮官は警視総監、事務局は警備部に置かれる。その後、非番の機動隊員もかき集めて、数百人態勢の規模にならなければ、爆発物の処理、交通封鎖などを行うことは難しいという。

「そして、SATの隊員が、複数のテロリストと対峙することになります。派遣される人数はケースバイケースとしか言いようがない。ただ、SATは一般市民が周辺にいるような場所で応戦するような訓練は、あまり積んでいません。テロリストが劇場なり、レストランなりに立て籠もり、人数も明らかになったところで、突入ということになるはずです。ただ、日本では、なにより逮捕を優先しますから、いきなり射殺することはなく、閃光弾を用いるのではないでしょうか」(同)

■単独犯ばかり

 これまでに、SATが出動した主な事件を振り返ってみると、ルネサンス佐世保散弾銃乱射事件や愛知県長久手町立て籠もり発砲事件、町田市立て籠もり事件などである。

 警察庁の初代国際部長を務めた、大貫啓行氏が指摘する。

「SATが手掛けてきた事件は、いわば単独犯によるものばかり。多数のテロリストが一斉に騒乱を起こすような事件に対処できるかどうかについては疑問を持たざるを得ません。ですから、テロを起こさせないための方法が重要になる。まず、拳銃の管理を徹底し、各国の治安当局との情報交換を怠らない。そのうえで、テロの起こりそうな場所に注意を払わなければなりません。やはり、無職老人がこの6月、簡単に焼身自殺を図れたことで警備の脆弱性が裏付けられた、新幹線などがポイントです」

 対岸の火事だと、放っておくわけにはいかないのだ。

「特集 7人のテロリストで死傷者480人 自爆の爆薬は『魔王の母』 パリを硝煙の都に変えた『イスラム国』に次がある!」より

週刊新潮 2015年11月26日雪待月増大号掲載

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