[マンション偽装]「結局、ワインとマンションは10年物」で値上がり中古

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 こんな事件が起きてしまい、「結局、どこに住めばいいわけ?」と途方に暮れる方もいるだろう。その質問を、今回取材した専門家たちに投げかけると、彼らは口裏を合わせたかのように同じ台詞を吐いた。曰く、「ワイン同様、10年過ぎた中古マンションを狙え」。

 思えば、05年の“姉歯事件”はまだましだった。全てが一人のインチキ建築士のせいであり、補償面を考えると“やはり大手に限る”という答えが導けたのだから。だが、見ての通り、今回はそう単純な話では済みそうにない。

「今回のような問題が起きたのは、“工期は絶対厳守”だから。その原因は“青田売り”にあります」

 と、大手デベロッパー現役営業マンの三住友郎氏が指摘する。

「新築マンションは、完成前に売ってしまって金を集め、そのお金で工事をする。一方、もし引渡しが遅れるとデベロッパーが違約金を払わなければならない。一般に販売価格の20%、つまり5000万円の物件なら1000万円。大型マンションなら莫大な損失です」

 不動産コンサルタントの牧野知弘氏が後を継ぐ。

「完成前に契約を結んでいる、つまり売上が確定しているため、追加工事などで発生したコストを価格に転嫁できない。一定の予備費は見込んでいますが、その額を超えた際の負担はゼネコンや下請け業者に波及しやすい構造にあります」

 欧米では完成後に販売する「スケルトン売り」が主流だとか。日本ではその例はほとんどなく、あるとすればそれはただの“売れ残り処分”である。

■総会議事録を読む

 そこでオススメなのが、中古、それも築10年以上の物件である。

「建築の不具合は大概8年くらいで出てきます。法律で“10年保証”となっているのもそのためです」

 とはNPO法人「建築Gメンの会」副理事長で一級建築士の田岡照良氏。

「新築を買って、隣が変な人だったら困りますが、中古なら隣に住んでいる人もわかりますし、ゴミ捨て場を見れば、住民のモラルや管理人さんの態度も推し量れます」

 マンション管理組合コンサルタントの須藤桂一氏は、

「管理組合が活発かどうかも判断基準にしてみては。掃除や保守管理は管理会社の役目ですが、それをチェックするのが管理組合。見分け方は“掲示板”を見ることです。古い張り紙がいつまでもそのままになっているようなマンションは、管理組合の活動がいい加減なことが多い」

「榊マンション市場研究所」主宰の榊淳司氏曰く、

「仲介業者に“管理組合の総会議事録3年分を見せて”と頼んでください。実際に住んでいる人たちが抱いている不満や問題点が浮き彫りになっています」

 気を付けたいのは、あくまで“10年超”という点。

「私はかつて築8年のマンションを購入したことがあるのですが……」

 と不動産ライターの小石川シンイチ氏が明かす。

「大抵のマンションは10年目に大規模修繕がありますが、これがすごく紛糾する。私は理事でもなかったのに、すっかり疲弊してしまい、結局売り払いました」

 また、あまりに古すぎるのも注意が必要だ。

「耐震基準が変わった1981年以前の物件です。但し、耐震補強しているケースもあり、その場合は逆に安全と言えます」(建築エコノミストの森山高至氏)

 さらに、

「06年から08年にかけて、新築マンションが史上最も多く建った時期の物件は注意した方が良さそうです。横浜の物件もそうですが、建設ラッシュで工期がタイトだった時期で、手抜きや偽装のリスクがありますから。ともあれ、今回の事件により、中古物件が見直され、市場価格が上がるかもしれません」(小石川氏)

 無論、それはそれで慎重な判断が必要なのだが。

「特集 杭打ち偽装が全国で感染爆発! 今から『自宅マンション』を点検できる完全ガイド」

週刊新潮 2015年11月12日号掲載

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