「秋篠宮家」には先見の明がある「学習院初等科」で怪文書騒動

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「学習院初等科」が揺れている。9月下旬に一部生徒の父兄に届いた一通の怪文書には男性教員へのパワハラや不当な人事、教員同士の不倫疑惑が綴られていた。100年以上の歴史を誇り、歴代天皇を始め数多(あまた)の皇族や旧華族が通った学び舎で何が起こっているのか。

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歴代天皇を始め数多(あまた)の皇族や旧華族が通った学び舎

 その白い封筒は、衣替えを目前に控えた9月末に配達された。差出人は「学習院初等科教員有志」で、宛名には学習院初等科に通う6年生の児童の名前と並んで「保護者様」とあった。

 送付先は2012年度の3年東組に所属した32人と見られており、中には、

「突然のお便り、お許しください。我々は、我慢の限界に達しました。もうこれ以上、『学習院の間違い』から目を背けることはできなくなりました」

 と始まる、B5用紙5枚の怪文書が封入されていた。

「無実の罪を着せられずっと苦しんでいらっしゃる先生がいらっしゃることを見逃すことはできなくなりました。(中略)その先生が関わる子どもたちやご父母の皆様に初等科がしてきたことが許せません。その先生とは、田中真治先生(編集部註・仮名)です」

 全体を通して言葉使いは丁寧なものの、中身はかなりえげつない。要約すると、

〈田中氏は13年3月まで3年東組の主管(編集部註・担任)だったが、4月に進級する際に主管を外された。学校は保護者にこの人事を栄転と説明したが、実際は処分だった。

 主な理由は田中氏の勤務態度で、遅刻や二日酔いでの出勤、子どもへの暴言が常態化しており、主管だった東組が学年で最も成績が悪かったとされた。ところがそれらは事実ではなく、20年以上、田中氏にパワハラを続けてきた男性教師と、その彼に好意を寄せている女性教師の謀略だった。

 発端は12年11月に、男性教師に大勢の前で怒鳴りつけられた田中氏が、学校のハラスメント委員に相談したことだった。男性教師は過去にパワハラで処分を受けており、今回は職を追われる可能性があった。それを心配した女性教師が学校に田中氏に関する虚偽の報告をし、男性教師のパワハラをうやむやにした。

 三浦芳雄科長(当時)はそれを鵜呑みにして、田中氏の言い分を聞かずに主管から外した。田中氏に不当な人事処分が下されたことで、子どもたちは慕っていた教師の指導を引き続き受ける機会を奪われた――〉

 実際、田中氏は13年4月に4年東組の主管を離れており、怪文書の最後は次のように結ばれている。

「いい学校になって欲しい一心で、ご父母の皆様方にこうして教員の恥をさらす覚悟をしました。ご父母の皆様、我々が教員という同じ立場にいながら、無力でありましたことを本当に申し訳なく思います」

 とはいえ、所詮は出所不明の怪文書。皇室ジャーナリストは憤りを隠さない。

「学習院でこんなにイメージの悪い話は聞いたことがありません。愛子さまが中学に進学された後だったことが、不幸中の幸いでした」

 さらに孝明天皇以来という、歴史と伝統に泥を塗る由々しき事態とした上で、

「初等科には秋篠宮家の悠仁さまが通われる可能性もあったわけです。お茶の水女子大学附属小に進まれたことで、結果的に騒ぎに巻き込まれずに済みましたが、両殿下は胸をなでおろしていると思いますよ」

 中身の真偽はさておき、怪文書で擁護された田中氏とはどんな人物なのか。彼を知る学習院関係者が言う。

「子どもの考え方を最大限尊重するタイプです。教科書の内容や問題の解き方を押し付けず、まずは意見を聞いてみる。子どもに寄り添って指導する方です」

 過去には皇族の指導に当たったこともあるそうで、

「理科や家庭科などを寛仁親王のご長女である彬子女王を始め、高円宮家の次女の千家(せんげ)典子さまとその妹の絢子(あやこ)女王に教えたそうです。最近では、秋篠宮眞子さまや佳子さまが1、2年の時に担当していました」

 11年には勤続20年の表彰を受けた、ベテラン教師の1人という。

失われる格式と品位

「学習院初等科」が揺れている

 学習院初等科は慶応義塾幼稚舎、青山学院初等部と並ぶ、「名門私立小学校の御三家」の一角という位置づけだ。皇族の学習院離れが指摘されて久しいものの、都内の小学校受験塾の関係者によると、

「学力だけでなく、躾などを重視する初等教育に定評があるのがこの御三家です。中でも学習院は独自の教材で作文の練習をさせるなど、国語教育に熱心なことで知られます。大学のブランド的には慶応や青学に劣る印象がありますが、今上陛下を始めとする皇族や旧華族方が学ばれた伝統や格式に価値を見出す父兄は、今でも少なくありません」

 さて、保護者の怪文書の受け止め方は様々だが、ある男児の父親は、学校側への不信感を強調した。

「初等科では、3年生から4年生に進級する時の主管の交代は滅多にありません。だから、あのタイミングでの異動に違和感を覚えた保護者が多かったのは事実です。怪文書に書かれていることが本当なら、学校は私たちにウソの説明をしていたことになります」

 この点に関して、怪文書に実名で登場する三浦前科長の見解は、

「私も言いたいことはありますが、立場上コメントすることはありません」

 また、パワハラが指摘された男性教師は取材に応じず、虚偽報告で田中氏を陥れたとされる女性教師は、

「何も分かりません」

 と繰り返すのみ。それは田中氏も同様で、自宅のインターホン越しに、

「広報を通して下さい」

 と回答。改めて怪文書を作成した人物に心当たりがないか、或いはご自身ではないのかと尋ねても、

「とにかく、法人の広報課に聞いて下さい」

 と言うばかりであった。

 学校法人学習院の見解は、

「手紙の存在については承知しておりますが、初等科内の役割分担につきましては、教員の適性を考えて行っております。また、本件のような匿名による文書、ならびに推測また仮定に基づく質問につきましては、お答えする材料を持ち合わせておりません」(広報課)

 最後に皇室ジャーナリストの松崎敏弥氏が指摘する。

「皇族や旧華族の子弟の入学が減り続けていることで、教える側の矜恃や緊張感が欠けつつあるのでしょう。今回の騒動は学習院の格式と品位が徐々に失われて、名実ともに“普通の学校”に変質していることを如実に示していると思います」

 怪文書は“紙の爆弾”とも呼ばれる。学習院初等科が被るダメージは、決して小さくないのだ。

「特集 『秋篠宮家』には先見の明がある『学習院初等科』で怪文書騒動」より

週刊新潮 2015年11月5日号掲載

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