どうなる「維新」政党助成金 告訴合戦に参戦した因縁の“ヤメ検”

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 夏から続いた「維新の党」の分裂騒ぎは、「大阪側」が独自に党大会を開き、解散を宣言したことで、緊張の頂点を迎えた。拗(こじ)れに拗れた、「維新の党」“東京側”と“大阪側”双方の関係。気になるのは今後の行方である。

橋下徹大阪市長と松野頼久代表

 政治部のベテランデスクによれば、

「現在の主たる争点は2つ。ひとつは、政党交付金の入る銀行口座を巡る争い。もうひとつは、党の正当性を巡る争いです」

 ひとつ目の銀行口座については、「維新の党」には、年4回に分けて、政党交付金が、計約26億6400万円振り込まれる。党の本部は大阪市内にあり、そのため、その振込口座の預金通帳と印鑑は、そのまま大阪側がキープしているのだ。

 デスクが続ける。

「10月12日の分党に関する協議が決裂した後の16日、東京側の松木謙公・幹事長代行がこれらを取り戻すために、大阪へ向かいました。一方の大阪側は、メーリングリストで“通帳、印鑑、名簿を渡してはいけない”“東京の議員が来るかもしれないから、行ける人は本部に行ってくれ”と、議員に連絡。この日は、屈強な元ラガーマンの井上英孝代議士らが詰め、松木さんの要求を拒否。その後も5日間ほどは、こうした“番”が続いていました」

 取り返しに失敗した東京側は、今度は銀行に相談し、口座を凍結する。大阪側も同じように口座を凍結し、現在、口座は誰も金を引き出せない状態となっているのだ。

 こうした場合、

「銀行は、どちらかの正当性が明らかになるまで、一方から凍結を解除したいという申し出があったとしても応じることが出来ないのが通常」(メガバンク行員)

 ゆえに、ふたつ目の、党の正当性を巡る争いの行方が焦点になる。

 現在、東京側は、通帳を返還しなかった行為は威力業務妨害罪、党大会を勝手に開いた行為は偽計業務妨害罪に当たるとして刑事告訴する方針。

 大阪側も、松野頼久代表(55)が政党事務所の変更届を各所に出したことについて、有印私文書偽造、行使の罪で同じく刑事告訴を行うという。

 もっとも、元裁判官の井上薫氏によれば、

「いずれも犯罪の構成要件に該当しているとは思えない。まず立件されることはないでしょう」

 と言うから、舞台は民事の場だ。

 ちなみに、本件で、東京側が法的なアドバイスを求めたのは、「ヤメ検」の郷原信郎弁護士。郷原氏は2011年、民主党の要請で、大阪府知事選に松井一郎現知事(51)の対抗馬として出馬を検討した過去がある。大阪側とは5年越しに、因縁の対決が繰り広げられるのだが、しかし、そこでも、

「争点は極めて政治的な案件なので、ここに深く入り込むと、裁判所の“政治介入”となり、極論を言えば三権分立を壊すことにもなりかねない。結果的に、どちらの正当性も裁判所では判断しない“逃げ腰の判決”が下されることになると思います」(検察OB)

 というから、双方決着つかず、泥沼の争いが続く、ということになりそうだ。

 在阪ジャーナリストの吉富有治氏が言う。

「これまでの橋下さんの経歴を見れば、組織をまとめることが出来ないのは明白ですが、今回もまさにそれが露呈してしまいました。最初は笑顔で握手をしても、最後は必ず喧嘩別れをしてしまう。彼の辞書に“調和”という文字はなく、あるのは“闘争”だけ。しかし、今の一件では、彼が好んで使う“ガバナンス”が彼自身、まったくできていないことがわかった。これで、『維新の党』の社会的信頼は落ちるでしょう」

 10月31日には、新党を結成し、11月22日の大阪府知事、大阪市長ダブル選挙に臨む橋下氏と大阪「維新」。

 さて、今回の騒動を受けて、大阪の有権者はそれでもなお“彼ら”を選ぶのか、それとも――。

「特集 新聞が報じない仰天の真相! 『維新』醜態の元凶は『橋下』大阪市長を操るわがままな黒幕」より

週刊新潮 2015年11月5日号掲載

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