血圧が下がって美容にもいい1日15分の「血管マッサージ」――明田昌三(医学博士・榊原温泉病院名誉院長)

ドクター新潮 健康 整体

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 国内4000万人の高血圧症患者にとって、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まる冬は要注意。そこで、秋の夜長に1日15分のセルフケアである。美容にも効果てきめんの「血管マッサージ」を、第一人者である三重県「榊原温泉病院」名誉院長の明田昌三医師が伝授する。

 津市の山間に湧く榊原温泉は、清少納言の『枕草子』にも名泉として登場するほど歴史が古く、私の勤務する病院でも、当地のアルカリ単純泉を治療に役立てています。患者さんは主に脳卒中の後遺症でリハビリを行ったり、リウマチや神経痛に罹っている方などですが、私が取り入れた「血管マッサージ」によって、リハビリの効果はもちろん、長く続けた方の9割に、血圧が下がるという目覚ましい効果が現れています。

 そもそも、このマッサージと出会ったのは2000年秋のことでした。高血圧と不眠を訴えて私の病院に入院していた知人が、病室でしきりに手足をひねるように揉んでいたのです。聞けば、世界的な病理学者である岡山大学名誉教授の妹尾(せのお)左知丸先生から教わった「血流をよくするマッサージ」だと言う。実際にその知人は、わずか3週間で血圧が160から120にまで下がって退院していきました。そこで、ぜひ治療の現場に取り入れたいと考え、妹尾先生にお会いして直に教えて頂くことにしました。

 最初は半信半疑でしたが、お話を聞くうち目から鱗が落ちました。何と、血管に刺激を与えるだけで体中の循環が良くなり、血圧が下がるだけでなくシミや小ジワも消えるというのです。

 人間はおよそ60兆個の細胞から形成される生命体であり、それらは各部位で重要な役割を担いながら生命活動を支えています。細胞に酸素と栄養物を十分に与えることで健康が保たれるわけですが、その運搬ルートとなるのが血管。心臓をポンプにして大動脈、中動脈、小動脈、細動脈と繋がり、その先にある毛細血管の穴を通じて、細胞に酸素と栄養が行き渡ります。この毛細血管で動脈と静脈がスイッチし、心臓への戻り道では、静脈が老廃物を受け取って排泄する役割を果たします。

 血管の全長はおよそ12万キロ。対して人間の総血液量は、体重の12~13分の1でしかありません。圧倒的に少ない血液は、おのずと必要な箇所にはよく流れ、そうでない部位には流れない。我々の意思とは無関係に、勝手にアダプテーションしているわけです。

 それを全身くまなく行き渡らせるには運動が必要で、何もしなければ血流は悪化するばかり。特に男性では40代ともなれば、血管の内壁に余分なコレステロールが蓄積し、血管腔が狭くなって柔軟性が失われていく。これが動脈硬化です。

 運動不足に加えて動脈硬化が進めば、末端の細胞まで栄養が行き届かずに弱体化してしまいます。血流が滞ると、心臓が必死になってポンプ機能を高めるので血圧が上昇する。その高血圧が慢性化し、ますます動脈硬化を推し進める羽目になります。さらには、圧に耐えられなくなった血管が損傷し、脳出血や心肥大、心筋梗塞、腎臓病という死に至る重大な病に繋がりかねません。

 とはいえ、生活習慣は変えにくく、仕事や家事に追われて運動もままならない。そこで、いつでもどこでも手軽にできる「血管マッサージ」の出番なのです。

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