右手にシリア、左手にウクライナの「プーチン」大博打

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 過激派組織「イスラム国」を打倒するとして、シリア領内で連日のように行われているロシア軍の空爆。

「シリアのアサド政権支援のためと言われますが、それにしても熱心です。確かにロシアにとってシリアは中東における唯一の軍事同盟国。西側諸国が支援してきた反体制派の拠点をも、同政権を守るために攻撃しているとして、アメリカなどからは非難されていますが、プーチン大統領はどこ吹く風です」(国際部記者)

 その一方、10月19日に英テレグラフ紙は、ウクライナ東部「ドネツク人民共和国」で、“スターリン崇拝”が進行していると報じた。

 プーチンが信奉すると言われるスターリンの肖像画は、かつてはタブー視されていたが、今では「ドネツク」の到るところに掲げられ、旧ソ連時代の司法制度も復活しているという。

「『ドネツク人民共和国』は国と名乗っていますが、実質はロシアの支援を受けてウクライナ東部を支配する武装勢力です。クリミアがロシア編入を決めた住民投票に影響され、ドネツク州の親ロ派が一方的に独立を宣言しました」(同)

 そこでスターリンが崇拝されているなら、経済制裁を招いた「ウクライナ問題」のお膝元で、ロシアの実効支配が浸透したということ。プーチンもそう見極めてシリア空爆に打って出たのか。

「いえ、違うでしょう」

 とは、ロシア情勢研究家。

「ウクライナはかつて、スターリンのジェノサイド政策の餌食となり、人工的な大飢饉で数百万人が命を落とした。思想統制で押さえつけてもその悲劇を忘れるはずがない。また、ロシアの国内情勢は窮乏の一途。経済制裁に原油安、ルーブル安。市民の自殺、一家心中が多発しています。家計に占める食料購買費が2割以上減少したとする統計もあり、食糧事情が深刻です」

 むしろ、圧力を増す国内事情に背を押され、世論の目を外に向けさせるために大博打に出たというのだ。

「空爆費用は1日400万ドル(約4億8000万円)とも。プーチンがどこまで耐えられるか」(同)

 耐えるほど、混乱も続く。

週刊新潮 2015年11月5日号掲載

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