走れど走れど赤字ダルマか「北海道新幹線」

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〈ごらんあれが竜飛岬、北のはずれと〉――石川さゆりが唄った『津軽海峡・冬景色』。秋が終わり冬の嵐が収まれば、海峡の只中を北海道新幹線が突っ走る。

 来年3月26日に結ばれるのは、青森県の新青森駅と北海道の新函館北斗駅間。東京から乗り換えなしで北の大地まで行くことができるとあって、地元の期待は高まるばかりだが、開業まで半年を切り、JR北海道が国に運賃の認可を申請したことでさざ波が立っている。営業開始後の3年間で、約145億円もの赤字が見込まれるというのである。

「2016年度の収入額は約108億円に対して支出額は約160億円。初年度だけで約52億円の赤字です、支出の内訳は、施設維持費に約78億円、線路を敷設した独行法人への使用料が約4億5000万円。そこに、乗務員などの人件費が加わります」(地元記者)

 毎年約50億円もの赤字が続くとは穏やかでないが、“カネ食い虫”なのは、海底部で世界2位の長さを誇る青函トンネル。開業から30年弱で塩害による腐食もあり維持費が嵩むそうだが、最終的には乗客が背負いこむ格好だ。

「JRは、先の試算と競合する航空会社の料金を考慮して新幹線の運賃を設定しましたが、東京から新函館北斗まで指定席を利用した場合は2万2690円。同じ距離で比較すると、東海道・山陽新幹線の1・58倍となり、“日本一高い”新幹線となります」(先の記者)

 東京から函館まで飛行機を使うと、大手航空会社より安い正規運賃を設定するエア・ドゥでも3万円前後だが、所要時間は約1時間半。対する新幹線は約4時間半かかるのも、赤字の一因になっている。

 高速鉄道事情に詳しい、鉄道アナリストの川島令三氏はこんな意見だ。

「新幹線は時速300キロ以上で走れる性能を持っていますが、在来線とレールを共用する青函トンネルでは時速140キロしか出せずに時間がかかる。どうせ移動時間が長くなるのなら、車内でくつろげるラウンジやドーム型の展望車を設けてみてはどうでしょう。乗る楽しみを提供すれば、もっと需要が増えるのでは」

 往年の青函連絡船には、ゴロンと雑魚寝ができる“桟敷席”なんてのもあった。

週刊新潮 2015年10月29日号掲載

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