“嘘つき”ヒラリーvs“傲慢”トランプの華々しき舌戦

国際

  • ブックマーク

Advertisement

「色見えで/うつろふものは世の中の/人の心の花にぞありける」と小野小町は詠んだが、歌の通り、目に見えず色褪せ、移ろうのが花ならぬ人の心というもの。

 今年6月には75%という高い支持率で米大統領選の民主党候補として大本命視されていたヒラリー・クリントン氏(67)。ところがその支持率は10月には40%台前半に落ち込み、2位のバーニー・サンダース氏(74)の猛追に曝されている。

ヒラリー・クリントン氏

「国務長官時代の私用メール問題が思いのほか傷になりました。ある大学が有権者に対して行った、大統領候補について最初に思いつく言葉は何か、という調査で、ヒラリーの場合、“嘘つき”という回答が最多でした。その他、“不正直”や“信頼できない”という回答も。共和党では、当初最有力と言われながら、現在は低迷中のジェブ・ブッシュ氏(62)が、“ブッシュ”と身も蓋もない答。支持率トップを走る“暴言王”ドナルド・トランプ氏(69)は“傲慢”です」(国際部記者)

 その“嘘つき”ヒラリーが突如、“傲慢”トランプに噛みついた。12日、トランプ所有のラスベガスのホテル前で行われた集会で、ヒラリーは「彼は面白いと言う人がいるが、移民や女性を侮辱することのどこが面白いのか」などと痛烈に批判したのだ。

 これまでもトランプはヒラリーに「米国史上最悪の国務長官」「キンキン声」などと悪口を投げかけ、ヒラリーはヒラリーで人気コメディー番組でトランプの物真似を演じたり、「彼は人々に偏見と被害妄想を与えている」「人々を扇動し、非常に危険」と発言するなど、舌戦に応じてきたが、なぜいま攻勢に出、名指しで批判するのか。

 外交ジャーナリストの手嶋龍一氏は言う。

「支持率が落ち、ヒラリーも危機感を抱いているのでは。共和党と戦えるのは私しかいない、と党内で存在感を示す狙いでしょう。極度に左寄りなサンダースの支持が増加しているように、“反ワシントン”、即ち既存の政治体制に対する抵抗感が増しているのです」

 共和党候補でも、トランプに肉迫するのは元神経外科医のベン・カーソン氏(64)、政治経験はゼロだ。

 手嶋氏は言う。

「混戦と言うより“混迷”と言うべき状況です」

 花の色も褪せるばかりか。

週刊新潮 2015年10月29日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。