台湾「民進党」で進む親日「李登輝」外しのウラ

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〈李登輝元総統が総統選で影響力を及ぼすことは絶対に許さない〉〈李元総統の意見は考慮しない〉

 蔡英文氏(59)率いる台湾・民進党の内部文書に躍るのは、同党選挙戦略対策会議の激烈な決議の文字。

 来年1月16日に迫る台湾総統選。前回選挙で蔡氏は初の女性総統誕生かと目されながら惜敗。だが今回は勝利が確実視される中、今月6日に来日――。

「2012年は李登輝元総統(92)が総統時代に外交ブレーンだった蔡氏を支持。選挙は接戦となりましたが、中国との融和ムードの中、“親中”の国民党・馬英九氏(65)が再選を果たしました。しかし馬政権は昨年の学生による立法院占拠や、統一地方選での歴史的惨敗に見られるように、対中政策などで失望を買い、一時は一ケタ台まで支持率を下げました」(現地記者)

 先の文書は来る選挙をこう分析する。

〈蔡英文は、これまで35~40%前後の支持率を安定して維持してきた〉〈劇的な事件でも起きないかぎり、16年の総統選に当選するのは蔡英文と見てほぼ間違いなく、米国も中国もすでに民進党が政権を握る心の準備をしていると思われる〉

 5月末からの訪米ではワシントンから異例の歓待を受け、6月には「タイム」誌アジア版の表紙を飾るなど、国際的な注目も集める蔡氏と、“台湾民主化の父”李登輝氏との縁は深い。

 12年の選挙で、投票前日、大腸ガンの手術から間もない李氏が蔡氏の求めに応えて蔡陣営に駆けつけ、感動的な応援演説を行ったのは語り草だ。なぜその“恩人”を民進党は排除するのか。

「蔡氏個人の意向は別として、中国とも日本ともバランスを取ろうとする今の民進党の主流派からすると、李氏はあまりに“親日”に映るのかもしれません」

 とは、ある台湾の政治ウォッチャー。

「確かに李氏は日本統治下の台湾で生まれ、京大に進学。太平洋戦争当時、自分は〈紛れもなく『日本人』として、祖国のために戦った〉と雑誌で発言し、台湾では物議を醸しました。が、“台湾のためなら、もういつ死んでも構わない”とも公言し、今も日本の政財界に太いパイプを持つ李氏を排除すれば、日台関係はどうなってしまうのか」

“親日国”の進路に警戒の目が必要だ。

週刊新潮 2015年10月15日神無月増大号掲載

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