ノドから手が出る支持率回復! それでも「小泉進次郎」官房副長官をためらう事情

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 組織のトップは、常に人事で悩む。内閣改造を行う安倍晋三総理(61)とて同じである。本来、適材適所を徹底させるべきだが、支持率アップを考えれば、小泉進次郎議員(34)を官房副長官に起用したいところ。だが、官邸にも進次郎氏にもためらう事情があるという。

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「あとは支持率。支持率がどう出るかだ」

 安倍総理は、安保法案が成立した後、側近たちの前でこう語っている。全国紙の政治部デスクが解説するには、

「法案成立後、各社が行った世論調査をみると、内閣支持率は1~5ポイント程度下がった。官邸は、最悪10ポイントくらい下がることも懸念していましたからね。それを考えれば、この結果は御の字といえます。ただし、相変わらず、不支持率が支持率を上回っている状況は変わりありません。来年の参院選に、今の支持率のまま突入するのは危険過ぎる。株価は先行き不透明だし、今後、支持率を上げられる要素もあまり見当たらない。安倍さんが、今度の内閣改造で支持率を上げたいと考えるのも当然です」

 内閣改造は、10月の第2週、7日を軸に行われる見込みだ。今のところ、19人の閣僚のうち菅義偉官房長官、麻生太郎副総理兼財務相、岸田文雄外相、甘利明経済再生担当相、遠藤利明五輪担当相の留任が決まっている。

「このほか、中谷元防衛相、塩崎恭久厚労相の続投報道も出ています。実際、安倍さん自身、改造について『骨格は維持する』と語っていますし、『狭き門』となる見込みです。支持率アップは、残ったポストで清新なイメージの人を起用できるかどうかにかかってくる」(同)

 目先の話をすれば、安倍総理が最も気にかけているのは、稲田朋美政調会長の処遇だという。

「彼女に自分の後継者としてどうステップを踏ませたらいいか、を考えている模様です。タカ派色を消すために経済閣僚の経産相に起用するとの説が出ています。もしくは、彼女は当選4回なので、重要閣僚になると党内から不満が出かねない。そこで、大臣から一段格落ちの官房副長官に起用されるという話も聞きます」(同)

 さらに、元アナウンサーの丸川珠代参院議員の起用も検討中で、

「具体的には、少子化担当相や女性活躍担当相を任せたいようです。丸川さんは、3年前、第一子を出産し、現在子育て中。周囲には『2人目も欲しい』と漏らしている。もし、大臣在任中に妊娠・出産なんていうことになれば、『女性活躍』を掲げる安倍政権の象徴としてピッタリでしょう。しかし、問題なのは稲田さんも丸川さんも、安倍さんと同じ清和会の出身であることです。“所詮、お友達人事”と言われかねません」(同)

 2人を抜擢しても支持率回復の“サプライズ人事”にはならない、との見方がもっぱら。かといって、他に新たに閣僚候補になる女性議員は見当たらない。安倍総理や側近らは、内閣改造で内心、頭を抱えているかもしれないのだ。しかしながら、総理の女房役の菅官房長官は、意外にも、「今度の人事で、支持率アップは確実。安保法制が済んだら、安倍政権は経済重視でいく。それに人事が加わって、この秋からは、順調な政権運営ができる」

 と、自信たっぷりに話しているのだ。

■官房長官会見を…

 では、この自信は、一体、どこから来るのか。

「菅さんは、サプライズで復興大臣政務官・内閣府大臣政務官の小泉進次郎氏を、官房副長官か復興相で起用するつもりでしょう。彼を使えば、支持率は確実に上がりますからね」

 そう断言するのは、さる官邸関係者である。

「進次郎氏は、党青年局長時代から『TEAM-11』で東日本大震災の被災地を訪問しています。来年の3月で、震災から丸5年を迎える。復興担当の政務官から大臣に昇格させれば、政権のイメージアップになる」

 しかし、これには、一つ問題があって、

「清和会は、吉野正芳代議士を復興相に推薦している。彼は当選6回で、被災地のいわき市出身。地味ながら派閥で一目置かれる存在だし、復興にも熱心に取り組んでいる。安倍さんといえども出身派閥の意向を無下にすることはできません。とすれば、進次郎氏は官房副長官に起用される可能性が一番高い」(同)

 念のため言っておくと、官房副長官は、衆院議員、参院議員、官僚の3人体制である。

「進次郎さんは、官房副長官になってもおかしくないと思います。官邸サイドのメリットが大きいです」

 と分析するのは、ノンフィクションライターの常井健一氏。

「現在、進次郎さんは34歳。もし、官房副長官に起用された場合、34歳9カ月で少子化担当大臣として最年少入閣した小渕優子さんに匹敵するスピード出世となる。今回の閣僚人事で間違いなく目玉になるでしょう」

 先の官邸関係者も、

「官房長官会見は、平日の午前と午後、1日2回行われます。もっとも、国会などで身体が空かない場合は、副長官がピンチヒッターを務めることになる。菅さんは、最近よく“疲れた”と愚痴っているし、進次郎氏に会見を少し任せるつもりでは」

 総理の外遊には、衆院か参院の副長官が同行する。

「安倍総理の後ろを進次郎さんが付いて回ることになる。マスコミを通じて“若い自民党”をアピールできます。現に安倍総理自身が3回生の時、小泉純一郎さんから推薦を受け、官房副長官に抜擢された。その後、官房長官に昇格し、小泉政権に貢献した。その再現と言えるでしょう」(常井氏)

 とにかく、“進次郎人気”を最大限に利用しようということらしい。

 加えて、常井氏は実務面でも、進次郎氏には適性があると見る。

「彼は、復興担当として被災地に赴く姿が印象的です。が、ほかにも内閣府大臣政務官を務め、地方創生を中心に政府広報や成長戦略、創造開発特区などの分野も担当しています。政務官に就任してからこの2年間、朝から晩まで会議や視察・国会答弁があって、かなりの激務でした。会議の進行や取りまとめ役、シンポジウムの企画・進行といった対外的な仕事が多かった。そういう意味では、官房副長官に求められるスポークスマンとしての仕事に長けていますし、順当なステップアップの仕方といえるでしょう」

■最高の3回生

 安倍政権にとって進次郎氏の起用は、良いこと尽くめ。と思えるが、

「進次郎副長官は、人気取りであることが見え見え。党内には衆院で当選が5回以上、参院で3回以上の入閣待機組は、約60人います。彼らを差し置いて、進次郎が副長官なんかに起用されたら、さらなる嫉妬を生むだけ。安倍さんは、それを覚悟の上で起用を決断できるかどうか」(先の政治部デスク)

 選挙事情に詳しい自民党職員もこう語る。

「ご承知のように、進次郎氏は客寄せパンダとしては絶大な人気です。昨年の衆院選でも、応援弁士としてのリクエストが一番多かった。地元には2日間しか入らなかったが、27都道府県、64カ所の応援演説に行っています。ところが、官房副長官は、選挙期間中は基本的に官邸で留守番しなくてはならない。来年の参院選では、彼の人気を利用できなくなるというデメリットがある」

 そして、最も肝心なのが、進次郎氏が副長官を受けるかどうかである。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、

「現在、彼にとっての一番の政治的なテーマは震災復興です。それに関するポストでない限り、関心もないと思います」

 として、こう続ける。

「特に印象的だったのは、2011年3月の震災から間もない頃、私の取材に彼はこう言ったんです。『今は復興関係の仕事に力を入れたい。10年間一生懸命やって、一つの形を作りたい。政治というのは簡単。困っている人を助けることなんです』と。その後、『TEAM-11』を立ち上げ、現在も復興大臣政務官のポストにいる。被災地の復興に対する想いは、当時からブレていません」

 あと5年半は、震災復興に携わるつもりだというのだ。

「彼が重要ポストヘの興味を示すようになるのは、それからだと思います。進次郎さんの場合、党内で非主流派を貫いてきた父親の姿を間近で見てきて、自民党では『出る杭は打たれる』ということをよく理解している。だからこそ、彼が今目指しているのは『最高の3回生』です。もし、閣僚や官房副長官などのポストを受けたら、先輩議員から警戒される。身の丈を意識しながら、その上限の役職の中で最高の仕事をするというのが彼の考えでしょう」

 自民党の中堅議員は、

「先日、地元・神奈川新聞に彼の初の単独インタビューが掲載された。その中で安保法制の、国民の理解が進んでいないことに関し『いくつかの原因を作ったのは自民党自身だ』と率直に語っている。こういう風に自由に発言するのが彼の良いところ。副長官となれば、そうはいかない。それに彼は、同僚に携帯の電話番号も教えないし、マスコミとの懇談もやらない。副長官は日々番記者に追い掛け回され、女の子とデートもできなくなる。若いうちからそんな窮屈な思いをするくらいなら、副長官は受けないと思うよ」

 官邸が進次郎氏を説得するのは至難の業。起用をためらう理由はこの点にある。

「9月24日の両院議員総会後、進次郎さんは記者から『入閣もあるのでは』と問いかけられた。いつもなら立ち止まって、ぶら下りに応じてくれるのに、『ありません』と一言だけ発してスタスタ行ってしまった。明らかに様子が違いました」(政治記者)

 結局、自民党には人材が不足しているから“進次郎頼み”になるのだ。

週刊新潮 2015年10月8日号掲載

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