反日姿勢を保っても「朴槿恵」大統領の心の中は?

国際 韓国・北朝鮮

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 止まった時計は1日に2度、正確な時刻を知らせる。だからといって「この時計は狂っていない」とは言えまい。「反日」で思考停止に陥った韓国・朴槿恵大統領の本音は、「戦争法案、絶対反対!」。ただ、それが極東の安全保障への深い洞察あってのものかというと否だ。

「韓国では政府のみならず、メディアも国民も挙げて、安保法案に反対です」

 とは、拓殖大学大学院の武貞秀士特任教授。というのも朝鮮半島有事のおり、

「米国支援、あるいは邦人保護の名目で、自衛隊が韓国に上陸することを警戒しているからです」(同)

 そればかりではない。

「安倍首相が、法案成立をしおに、『軍事大国化』という野望を持って海外派兵を推進すると指弾しているのです」(同)

 なるほど、「歴史認識を一向に改めない」と安倍政権に難癖をつける材料に安保法制を持ち出しているのだ。

「国際的にみると」

 と武貞氏が分析を続ける。

「安保法案は韓国が多とすべきもの。半島で不測の事態が発生した場合、国連軍は在日米軍基地を使って現地へ出動する。これによって、水や食料だけでなく弾薬や機材装備を日本の飛行機で運ぶことも可能です。そうとわかっていれば、北朝鮮や中国は戦争を起こしにくくなる。つまり、韓国の抑止力が高まるのです」

 しかるに韓国は、先に触れた通り、安保反対の大合唱なのである。

「韓国は米国からすでに離れ、中国陣営に入りつつある。その根拠は3つです」

 と指摘するのは、京都大学名誉教授の中西輝政氏である。その1は、中国が主導するアジアインフラ投資銀行に韓国が参加表明したこと。

「この銀行構想はいわば、米国の覇権を崩す目論見があるわけで、米韓同盟は終わったと考えるべき」(同)

 その2は、今月3日に行なわれた中国の軍事パレードに朴大統領が赴き、天安門城楼で習近平国家主席と共に観閲したこと。

「中国の軍拡を承認したとする政治的メッセージに他ならない」(同)

 そしてその3――。

「“在韓米軍を守るため”と、米国がかねて打診していた迎撃ミサイルを韓国が配備拒否したこと。米国の意思を袖にし、中国の意向を受け入れたという意味で、非常に重いものです」(同)

〈反日・反安倍〉という感情に凝り固まったズレた時計が、かくして北東アジアに新たな冷戦構造を持ち込むのだ。

【特集】「『安保法案』7つの疑問」より

週刊新潮 2015年9月24日菊咲月増大号掲載

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