JSC理事長はクビなのに居直る「森喜朗」組織委会長は老害キング

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 論語にいわく〈七十にして矩(のり)をこえず〉。人間およそ古希を過ぎれば、心の赴くまま動いても道に外れるような真似はしないわけだが、この人の場合は埒外のようだ。相次ぐ不手際もどこ吹く風、東京五輪組織委員会のトップに居座る森喜朗会長(78)である。

周りが見えず

 最終的な建設費用が3000億円を超すおそれも生じ、あえなく「ザハ案」は白紙撤回、コンペのやり直しを余儀なくされた新国立競技場――。さる12日には、整備主体である日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長が“9月末で退任”と報じられた。

「組織委員会の副会長でもある河野さんは森さんと昵懇で、4年前の秋に就任しました。今回、表向きは任期満了とされていますが、引責辞任であるのは明白です」(組織委関係者)

 これに先立ち、JSCを所管する文科省では、担当局長が8月に更迭されている。一方、名実ともに最高責任者である森会長は、計画が水泡に帰した7月17日、

〈(ザハ案は)垂れた生ガキみたいでイヤだった〉

〈たった2500億も出せなかったのか〉

 との語録を残し、続いて22日には日本記者クラブで、こう言ってのけた。

〈大変迷惑している。私には関係ない〉

 間髪を容れず、エンブレム騒動が降って湧いたのはご存知の通り。使用中止が決まった9月1日に官邸を訪ねた森会長、今度は報道陣にこう毒づいたのだった。

〈しゃべる義務はない〉

 かような人物を、一体いつまでトップに頂かねばならないのか。

■「五輪を舐めている」

 スポーツ評論家の玉木正之氏が指摘する。

「競技場とエンブレム、2つの失敗をした森さんが責任を取るのは当然ですが、簡単にはいかないでしょう」

 森会長は昨年2月、浅田真央について“大事な時に必ず転ぶ”と口にしたが、

「その講演では『あと6年、五輪の時には82。それまで何としても頑張って、組織委員会やっておれるなら有難いこと。それが一つの可能性に対する挑戦』と、執着を露わにしていたほどです。でも、どんな五輪にするのかという提案は聞いたことがなく、『立派な競技場を造る』と言いながら中身は全く不明。スポーツというものを根本的に理解しておらず、五輪を舐めているとしか思えません。それでポストにしがみつくのだから、見苦しい老人です」(同)

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏も、

「河野さんの辞任は、森さんが築き上げた体制の一角が崩れたとも映りますが、彼はそんなにヤワではなく、すでに次の手を打っている。後任に名の挙がった元Jリーグチェアマンの大東和美氏は、早大ラグビー部出身で森さんの後輩。また初代スポーツ庁長官に決まった鈴木大地氏についても、彼が教授を務める順天堂大と森さんは非常に関係が深い。いずれも、実質的には“森人事”。彼がいる限り、何も変わらないのです」

 先ごろ、森会長について報じた本誌記事が「名誉を毀損した」との理由で、ご本人から編集部に訴状が届いた。まさに“ノミの心臓”の面目躍如、最高権力者の座を経てもなお、巷の評判がよほど気になるらしい。

 そうした「個人的自衛権」を振りかざすより、名声を得たいのなら今なすべきことはただ一つ。すみやかに会長職から退くことだ。

【特集】「ごくごく個人的自衛権の問題」より

週刊新潮 2015年9月24日菊咲月増大号掲載

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