「任天堂」新社長に「元銀行マン」が選ばれた最大理由

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 日本人男性の平均寿命は80・50歳。これを考えれば、55歳でこの世を去るのはあまりにも早すぎる。7月11日、任天堂・岩田聡社長の訃報に世界中のゲームファンがネット上で惜別の言葉を贈った。あれから約2カ月。任天堂では社長不在の“異常事態”が続いていたが、ついに終止符が打たれたのだ。

 岩田社長が死去した直後、任天堂は代表権を持つ竹田玄洋専務(66)と宮本茂専務(62)の2人を「社長代行」に据えていた。

「ポスト岩田は、竹田さんと宮本さんの2人が有力視されていましたが、9月14日に君島達己常務の昇進が決まりました」

 こう語るのは、ITジャーナリストだ。

「竹田さんと、宮本さんはどちらも、業界では有名なゲームクリエーター。“ダークホース”の君島さんは、任天堂のメインバンクである三和銀行出身の元銀行マンで、銀行員時代はニューヨーク副支店長などを経験した国際派です。2000年から任天堂系列の株式会社『ポケモン』で代表取締役を務めた後、本社では人事や総務など内部管理を担当していました」

 なぜ、ダークホースに白羽の矢が立ったのか。全国紙の経済部記者が理由を明かす。

「竹田さんは職人肌ですが、カリスマ性が乏しく、社内の求心力も弱い。片や、宮本さんはマリオの生みの親だけにカリスマ性は抜群。ただし、コスト度外視でも面白いゲームを作ろうとする姿勢が強すぎて、“社内支持率”が高いとは言えない。君島さんの起用は、財務改善を望む創業家・山内家の意向が強かったのでしょう」

 2015年3月期決算で、任天堂の営業利益は247億円。4年ぶりに黒字転換したものの、売上高は5497億円とピーク時の09年から6年連続で減少している。

「4月から6月の第1四半期も、5年ぶりに営業利益11億円の黒字に転換した。これは円安の恩恵に与ったに過ぎず、抜本的な財務改善を行う必要がある。そこで財務に明るい君島さんが起用されたのです。とは言え、任天堂のトップはゲームを熟知している人でなければ……」

 君島新社長はショートリリーフ。業界はそう見ている。

週刊新潮 2015年9月24日菊咲月増大号掲載

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