関東第一の俊足強肩「オコエ瑠偉」は練習嫌いでゴルフも上手い

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 天性のバネを活かしたダイナミックな走りで一塁ベースを蹴る姿は、陸上トラックの最終コーナーを回るスプリンターを髣髴とさせる。疾走感溢れるプレーで甲子園を沸かせているのは、関東一高のオコエ瑠偉(るい)外野手(18)だ。注目度でも“清宮フィーバー”に迫る勢いのスピードスターは、しかし、父親がナイジェリア人という以上に異色のキャラクターの持ち主だった。

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 目の肥えたスポーツ紙記者も、彼の活躍には目を見張ったという。

「今月11日の高岡商との一戦は衝撃的でした。49年ぶりとなる“1イニング2三塁打”の大会タイ記録はもちろん、初回に放った二塁打には驚かされた」

 甲子園デビューとなる初戦の第1打席。オコエ選手が一塁線に痛烈な打球を飛ばすと、これを相手のファーストが弾いてしまう。

「普通ならラッキーな内野安打ですが、オコエは一気に加速して二塁べースヘと滑り込んだ。並外れた俊足に加えて、咄嗟の判断力が優れているのは間違いない。大舞台に動じない度胸もあるので、プロのスカウトも目の色を変え始めた」(同)

 50メートルを5秒96で駆け抜ける脚力と、遠投120メートルの強肩を目の当たりにして、彼の評価を「A」に格上げするスカウトも少なくないという。これは“ドラフト1位”候補として名前の挙がる、東海大相模の150キロ左腕・小笠原慎之介投手と同等の扱いだ。

■ハーフで45

 スポーツ紙が“期待の新星”と大々的に報じる一方、

「いまの立派な姿を見ていると、“シニアの時は本気出してなかったな!”と言ってやりたくなりますよ」

 と、苦笑するのは東村山シニアの渡辺弘毅監督。

「小学6年でジャイアンツのジュニアチームに入った頃から、地元では“ハーフの凄い子がいる”と話題になっていました。ズバ抜けて足が速いだけでなく、ヒットを打てば貪欲に二塁、三塁を狙う。肩の強さも断トツで、外野からバックホームしたらキャッチャーの遥か頭上のファウルネットに球が突き刺さったほど」

 だが、こんな一面も。

「練習には欠かさず参加していましたが、とにかくよくサボるんです。ノックの練習中に姿を消したと思ったら木陰で休んでいたり、嫌いな走り込みが始まると“ションベン行ってきます!”と言ったまま戻らなかったこともある」(同)

 そんなオコエ少年が野球よりも熱心だったのが、実はゴルフの練習。東村山第六中学校でゴルフ部の顧問を務めた安藤環氏によれば、

「部活と野球の練習が重なった時は“30分だけでも参加させてください”とせがまれたし、レッスンコーチにも“どうしたら球をまっすぐ飛ばせますか?”と積極的に質問していました。ベストスコアはハーフで45。自分に合ったクラブを使えば、18ホールを80前後で回れたと思います。ヘッドスピードも速くて、優に200ヤードは飛ばしていた」

 と、ゴルファーとしても才能の片鱗を覗かせていたが、母親の早苗さんは、

「夫は身長が195センチと大柄ですが、スポーツ経験は趣味でサッカーをしていた程度。ですから、息子が騒がれていることが未だに信じられなくて……」

 実母の戸惑いをよそに息子のスピード出世は続く。

「ワイド特集 陽炎の人」より

週刊新潮 2015年8月27号掲載

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