「ヤマト運輸」高卒大量採用が告げる「宅配異変」

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 宅配便を受け取る時間が指定できて、コンビニでは欲しい商品が何でも手に入る。数年後には、こんな当たり前の日常が崩壊しているかもしれない。

 8月8日付の各紙朝刊にこんな見出しの記事が載った。

〈高卒運転手採用 ヤマト6割増へ〉。それは大手運送会社のヤマト運輸が、ドライバーとして高卒400人を大量採用するという内容だ。流通担当記者の解説では、

「運送業は、1990年に事業が免許制から許可制に変更されたことで業者は飛躍的に増加しました。この10年を見ても、約5万9500社から4000社ほど増えて約6万3000社ありますからね」

 総務省の「労働力調査」によれば目下、トラック運転手の数は約83万人で、10年前に比べて約4万人増加している。では、なぜ、ヤマト運輸は大量採用に踏み切ったのか。全日本トラック協会広報室によれば、

「業界全体が高齢化に直面しているのです。運転手の約70%が40代以上で、3年前から20代は1割を切ってしまいました」

 つまり、中高年の運転手が定年を迎えると、現在の輸送体制を維持できなくなる恐れがあり、ヤマト運輸はその対策のために若者を大量採用するわけだ。若者が減った理由はなにか。

「自由化の影響で荷主の立場が強くなり、運送費の値下げ競争が起きたことでドライバーの給与が引き下げられました。若者離れの原因は、長時間労働と低賃金です」(同)

 ちなみに、トラック運転手の給与は業界平均で約29万7000円。10年前より2万3000円ほど減っている。

 熟練運転手が定年を迎えた時、若者がいなければ、今ある快適な生活は薄氷の上に成り立っているのかも。

週刊新潮 2015年8月27号掲載

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