調布「小型機」墜落“不運すぎる”確率と補償

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 穏やかな休日は、突如として舞い降りてきた死神によって地獄絵図と化した。

 7月26日、東京・調布飛行場を離陸した小型機は、直後に住宅地へ墜落。機長と搭乗者の他、全焼した民家に母親と暮らす鈴木希望(のぞみ)さん(34)の計3名が帰らぬ人となったのである。

「高性能化が進む航空機が住宅地に墜(お)ちる確率は極めて低く、とても数値化できるものではありません」

 と言うのは、航空アナリストの杉浦一機氏。国が1974年に統計を取り始めてから、航空機が地上の人間を巻き添えにした死亡事故はなく、ケガ人が生じた例も01年を最後に途絶えていた。加えて、被害に遭った鈴木さん親子はつい1カ月前に引っ越してきたばかりと聞けば、軽傷で助かった母親の気持ちは察するに余りある。せめて残された遺族には、相応の補償があって然るべきではないか。

「被害に遭われた方が生命保険に加入していれば、死因が飛行機の墜落による場合もお支払いの対象となります。家屋は契約内容によりますが、一般的な火災保険であれば、“外部からの物体の飛来”による火災事故に該当し、補償対象となります」(大手損保広報部)

 更に、航空機を運航する側も、事故による被害者への弁済に備えて航空保険加入が義務付けられている。

 が、先の杉浦氏によれば、

「事故機が都に提出した飛行計画には、パイロットの技能維持を目的とする“慣熟飛行”と記していたにもかかわらず、機長以外に4名もの人間が同乗していたことから“遊覧飛行”だったのではとの指摘もある。事実ならば条例違反になり、航空保険の支払いが認められない恐れもあります」

 調布飛行場は、近隣への安全対策として遊覧目的の飛行を禁じていたのだ。

「事故機を管理する日本エアロテックは、あくまで訓練のためだったと主張していますが、警察は飛行に至る経緯も含め、業務上過失致死傷の容疑で捜査を進めています」(社会部記者)

 事故原因の究明と共に、被害者への救済が為されるのは、まだ先になりそうだ。

週刊新潮 2015年8月6日通巻3000号記念特大号掲載

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