「課徴金」処分だけでは済まない 東芝「不正会計」事件

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 東芝の巨額“不正会計”の行方を探るメガバンクの行員は、官僚たちの話に耳を傾けている時、こんな言葉が脳裏をよぎったという。Too big to fail(大きすぎて、潰せない)。7月21日の記者会見で、歴代社長3人が辞任したが、霞が関の住人達が考える“着地点”は、果たしてどこか。

 元東京高検検事長などからなる第三者委員会は7月20日、東芝に提出した報告書で“組織的な不正があった”と断じた。経産省の中堅官僚が言うには、

「東芝は、子会社などを含めると従業員20万人を超える超巨大企業。しかも有利子負債は、1兆5000億円を超えている。上場廃止なんてことになれば株式市場はもちろん、日本経済への悪影響は計り知れない。企業責任としては有価証券報告書虚偽記載での“課徴金処分”が落としどころになるのではないか」

 その“前例”となるのが、造船重機大手「IHI」(旧石川島播磨重工業)の有価証券報告書虚偽記載事件だ。経済誌記者によれば、

「IHIは2007年3月期決算で、約46億円の最終赤字を約158億円の黒字と公表。新株と社債発行で約940億円を調達していたことが問題視され、過去最高の課徴金16億円の支払いを命じられています。また、4年前のオリンパス事件では課徴金は2000万円だが、刑事裁判で7億円の罰金を支払っている」

 東芝は14年3月期までの5年間で、社債4600億円を発行している。IHIのそれの約4・9倍になるので、課徴金は約78億4000万円になる計算だ。が、これで幕引きとはいかないという。

「IHIもオリンパスも、課徴金処分に前後して、個人株主から訴訟を起こされています。すでに、米国の弁護士事務所が東芝に対する集団訴訟を呼びかけていて、請求額は100億円を超えるはず。むろん、田中社長らの逮捕、起訴の可能性も低くありません」(先の記者)

“不正会計”の代償は、決して小さなものでは終わらないはずだ。

週刊新潮 2015年7月30日号掲載

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