中学2年生イジメで列車飛び込み 自殺のSOS見落としでもクラスがかばった「女教師」

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 またしても、悲劇は繰り返されることになった。岩手県矢巾(やはば)町に住む、中学2年の男子生徒がイジメを苦にして列車に飛び込み、自ら命を絶った。担任の「女教師」が自殺のSOSを見落としたために最悪の事態を招いたのだが、クラスの生徒はなぜかかばうのだ。

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 往々にして、列車への飛び込み自殺の目的は、社会への報復だと言われる。

 7月5日の午後7時半ごろ、JR矢幅(やはば)駅で列車にはねられて死亡した矢巾北中2年の村松亮君(13)は一体、何を訴えたかったのか。

 父親の祐亮さん(40)は、涙ながらにこう語った。

「最初、私の父から、“亮が死んだ”という電話がありました。弟にかけ直すと、すぐに刑事が電話口に出て、“急いで、紫波(しわ)署に来てくれ”と。茫然とした状態で、息子の亡骸と対面した。顔はきれいで、手足もあった。でも、お腹には大きな傷ができていて……」

 その翌日、調書作成のために紫波署に行くと、刑事から亮君の部屋で押収した“生活記録ノート”を手渡された。

「家に戻って、パラパラと捲(めく)っていたら、その内容に驚きました。これでは、亮は学校に殺されたも同然ではないかと……。ちょうどそこへ、校長先生が訪ねてきて、息子が亡くなったことを生徒たちに伝えたいと言うから、イジメのあったことを明らかにするのならと了承しました。ですが、校長先生はその約束を守ってはくれなかった」(同)

 そのため、40代の女性担任教諭との間で交わされた、その“生活記録ノート”を公表することに決めたのだという。

 主だった部分を紹介すると、

〈ボクは××(編集部注・同級生の実名)とけんかをしました。ボクはついにげんかいになりました。もう耐えられません〉(6月3日)

〈けんかいらい いじめはなくなりました。しかし ボクはまだおこっています。次やってきたら殴るつもりでいきます。そうなるまえに、ボクを助け……orz〉(6月5日)

 さらに、

〈実はボクさんざんいままで苦しんでたんスよ? なぐられたりけらりたり首しめられたりこちょがされたり悪口言われたり!〉(6月8日)

 そして、いよいよ自殺を仄めかすようになる。

〈ここだけの話、ぜっだいだれにも言わないでください。もう生きるのにつかれてきたような気がします。氏(ママ)んでいいですか?(たぶんさいきんおきるかな。)〉(6月28日)

 それに対し、女性教諭の返答は、

〈どうしたの? テストのことが心配? クラブ? クラス? 元気を出して生活しよう。亮の笑顔は私の元気の源です〉

 最後のやり取りは、次のように記されている。

〈ボクがいつ消えるかはわかりません。ですが、先生からたくさん希望をもらいました。感謝しています。もうすこしがんばってみます。ただ、もう市(ママ)ぬ場所はきまってるんですけどね。まあいいか……〉(6月29日)

 だが、女性教諭は、

〈明日からの研修たのしみましょうね〉

 と、まともに取り合っているようには見えない。

 その後、7月1、2日に亮君は学校の宿泊研修に参加し、3日は学校を欠席。週末の4、5日は、部活動に姿を見せることなく、命を絶ったのだ。

 結局、女性教諭は自殺のSOSを見落とし、校長や学年主任らに報告することもなかった。

 祐亮さんが続ける。

「実は、イジメは1年のときもありました。相手は同じクラスの4人組で、部活動もバスケ部で一緒だった。亮が学校に行くのを嫌がるようになり、部活の顧問の先生に相談しました。その結果、顧問の先生と当時の担任の先生、4人組の主犯格と息子の4人で話し合い、一旦、イジメは収まったのですが……」

 しかし、2年生になると再び始まったという。

「今度も、クラスメイトの4人組で、うち2人は1年のときと同じメンバー。最初は、からかう程度だったのに、だんだんエスカレートしていったそうです。髪の毛をつかまれて机に頭を打ちつけられたり、廊下でわざと肩をぶつけられたり、運動会の予行演習中に砂をかけられたりしたこともあった。息子が亡くなったあと、クラスメイトから、そんなふうにイジメられていたと聞かされました」(同)

■“校則だから”

 為す術なく、イジメを放置し、自殺を招いた女性教諭は昨春、矢巾北中に赴任した。授業は英語を担当し、剣道部の顧問を務めている。

 現在、不登校中の娘を持つ母親が明かす。

「私の娘は、イジメに遭い、1年生の1学期に手首を切り、3学期にはまったく学校に行けなくなってしまった。亮君は、娘がひとり寂しく帰宅しているときに声をかけてくれて、時折、ゲームセンターとかで一緒に遊んでいました。2年生で、亮君と同じクラスになった。1年のときの担任の先生は、毎日のように家に来て、“学校に顔出せよ”と娘を元気づけてくれた。ですが、2年の担任の先生は4月に1度、“具合はどうですか?”という電話をかけてきて、そのあと家庭訪問があっただけです」

 なおかつ、娘がこの5月に、学校復帰の意思を見せると問題が起こったという。

「まわりの視線が気になってしまう娘は、髪を下ろさずにはいられません。精神科の先生にもそうするように言われていて、校長先生には理解を示していただきました。でも、担任の先生は、“校則だから、髪を結ぶように”の一点張り。そのせいで、未だに娘は学校に通えずにいるのです」(同)

 イジメの対象になる生徒には無情に接していても、その一方で、女性教諭は他の生徒からは慕われていたようなのである。

 ある男子生徒の話。

「先生は、身近な友だちのように気楽に話ができるので、クラスのみんなから人気がある。この問、生徒の1人が“先生は間違ってないから、頑張って!”という手紙を出した。担任代行の先生がそれを見て、“みんなも書こう!”と、クラス全員に声をかけたのです。僕も、“早く戻ってきてほしい”と書きました」

 言うまでもなく、女性教諭が生徒への説明の義務を果たさなければ、その信頼を裏切るだけでなく、亮君も浮かばれないのだ。

週刊新潮 2015年7月23日号掲載

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