無茶をする「ギリシャ」を笑えない日本の恐ろしい数字の意味

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 西洋文明発祥の地・ギリシャが、いま奈落に突き落とされつつある。国際通貨基金(IMF)への返済は事実上のデフォルト状態に。挙げ句、国民投票ではEUの示した改革案への反対が多勢を占め、ユーロ脱退も現実味を帯びる。翻って我が国は……。対岸の火事では済まない、恐ろしい数字が並ぶ現実をお伝えする。

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 さる1日、EUなどの金融支援が失効し、IMFへの15億ユーロ(約2000億円)の債務も延滞扱いに入ったギリシャ。計2428億ユーロ(約32兆5000億円))の借金を、なお抱えたままである。

 日本の場合、国の借金は14年度末時点で1053兆円。GDPは490兆円だから2倍以上、世界一の負債額である。それでも、

「借金の7割以上が外資のギリシャに対し、日本は9割以上が国民の資金。外国に頼らず経済が回っており、デフォルトの可能性は低いというのが通説です」

 とは、シグマ・キャピタルの田代秀敏チーフエコノミスト。ところが、

「金融市場は別の見方をしています。いざデフォルトとなれば、ギリシャは外国人の債権を払わずに生き残れますが、日本は借金の大半を自国民が背負わねばならない。となれば、財政を蝕む年金、医療、介護を削らざるを得なくなります」

 その借金は毎年40兆円近く積み重なっており、

「超低金利なのに国の利払い費は膨れ、10兆円を超えています。金利が1%上がれば利払いは10兆円増え、仮に3%を超えたら30兆円。国の収入の多くが吹き飛んでしまいます」(同)

■2025年の恐怖

 現在、国内の個人金融資産は約1700兆円。ローンなどの債務を差し引き、実質1400兆円とみられる。

「理論上は、借金がその額を超えたら国内では資金調達できず、むろんその前にアウトでしょう。現在、日銀以外の金融機関は国債購入を控え始めている。手持ちの国債を処分し始めた“その時”が危険信号です」(同)

 城西大学の霧島和孝教授も、こう言うのだ。

「日銀は13、14年と2年間で合計160兆円の国債を買い込み、トータルで発行額の4分の1にあたる二百数十兆円分を保有している。いずれは手放さねばなりませんが、これを引き受ける国内の貯蓄が、少子高齢化とともに減る一方です。となると、国債の金利上昇を防ぐため外国人に持って貰うしか手がなくなる。ゆくゆくギリシャのようにならないとも限りません」

 五輪開催の20年が、経済の節目になるといい、

「それまでにゼロ金利などの金融政策を正常化せざるを得ません。その段階で、日銀は手持ちの国債を手放していくのでしょうが、そこで金利が上昇するおそれも大いにあるのです」(同)

 さらに、先の田代氏は、

「25年になると、有権者の半分以上が65歳以上となる。おいそれと年金削減などできず、かといって返す時は大増税プラス社会保障のカットは免れない。“インフレ税”という形で債務を減らすか、年金カットで増税か。Xデーが来たら、ギリシャどころではない地獄の苦しみが待っています」

 もはや、一日たりとも安閑としていられないのだ。

「ワイド特集 天地の狭間のドタバタ劇」より

週刊新潮 2015年7月16日号 掲載

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