そして誰もが尻込みする名門「小金井カントリー倶楽部」理事長の椅子

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 名門「小金井カントリー倶楽部」理事長の椅子といえど、決して座り心地は良くないらしい。今年3月以来、この老舗ゴルフ場では怪文書が撒かれ、会員総会では怒声が飛び交うなど、紳士の社交場とは思えない異常な状態が続いている。6月には事態打開のために新たに15人の理事が選出されたが、誰もが理事長への就任に尻込みしている。

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「こんなに混乱している時期に、理事長という立場になるなんてね。なる方がおかしいんですよ」

 呆れた様子で話すのは、6月26日に開催された会員総会で理事長代行に就任した草刈隆郎氏(75)だ。過去には日本郵船の会長や、経団連の副会長を務めた財界の重鎮の1人である。

「私に“倶楽部の現状を何とかして下さい”という要請があったのは事実。でも、“私は理事長にはならないよ”とハッキリ言っている。でも、誰もなり手がいない。だから、次の人が出て来るまでの間、理事の1人として正常化に向けた努力は責任を持ってやるつもり」

 今春来、小金井カントリー倶楽部では数千万円もの高額な機材の購入を巡る不正や、前理事長による特定会員への便宜供与という2つの疑惑が指摘されてきた。

 それを受けて、3月22日に会員総会が開かれたものの、会は紛糾。直後の31日には前理事長が辞任し、ようやく6月26日に改めて会員総会が開かれた。その場で先の草刈氏が実質的な理事長とも言うべき、理事長代行の任を押し付けられたというわけである。

■「面倒くさい」

 元理事の1人も憂鬱な顔。

「前理事長が追及された2つの疑惑だけでなく、一部の理事による目に余る公私混同ぶりもあったんです。女性のプレーが禁止されている日曜に自分の妻を同伴したり、贔屓のプロゴルファーを無料で招待したり。知人のレッスンプロを常駐させてアルバイトさせた人もいる。極めつきはコースの管理を関西の造園業者に委託した理事で、コースの芝は剥げるし、雑草は伸び放題。一時は河川敷のコースよりも酷い状態だった」

 この造園業者との契約には、理事と業者の間に裏金の存在が噂されたという。

「コースは荒れ放題なのに、造園業者には毎月1500万円が支払われていた。その何割かがキックバックされたと専らの噂だよ。困ったことに、こうした不正の影響か、倶楽部には何億円もの赤字が累積しているんだ」

 もっとも、黙って手を拱(こまね)いている会員ばかりではない。「小金井カントリー倶楽部の歴史に学び、伝統を守り、将来を考える会」を発足させて、経営と運営の健全化を訴える複数の古参メンバーも現れた。

「不動産会社や建設会社の社長ら3人が幹事を務め、会員たちに参加を呼び掛けています。が、彼らは70代と高齢なので、自ら理事長に名乗り出るところまでは至りません」(別の会員)

 このゴルフ場には、セブン&アイHDの鈴木敏文会長(82)やユニクロの柳井正会長兼社長(66)らも会員に名を連ねるという。しかし、多忙な彼らは理事はおろか、面倒な理事長職など引き受けるはずがないという。先の草刈氏とて、

「私ももう年だし、面倒くさい。いい加減にしてくれという気持ちもある」

 理事長の椅子は、しばらく空席のままになりそうだ。

「ワイド特集 天地の狭間のドタバタ劇」より

週刊新潮 2015年7月16日号 掲載

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