「大川隆法」総裁の予言を実践して倒産した「野菜ベンチャー」

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「土が要らない植物栽培」で注目を集めた、野菜ベンチャーの倒産情報が金融の街・兜町を駆け巡ったのは、6月29日のことだった。次世代の農業の方向性を示唆するニュービジネスというのをウリにしたが、創業者が実践していたのは、「幸福の科学」の大川隆法総裁(59)による“予言”であった。

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 倒産したのは、東京都の「株式会社みらい」で、10億9200万円の負債を抱え、東京地裁に民事再生法の適用申請を行った。同社は2004年に嶋村茂治会長(44)が創業し、以来、工場で野菜を作るというユニークな取り組みを続けてきた。経済部記者の解説。

「本来、野菜は畑から養分を吸収して育ちます。ところが野菜工場はこの常識を覆し、土の代わりに養分を含ませた水を与え、太陽光の代わりにLEDライト等を照射する独自の装置で栽培に成功したのです。今のところ、作物はレタスや春菊、水菜などの葉物だけですが、将来はトマトやきゅうりなども手がける予定でした」

 工場内は無菌に近いので農薬は不要な上、天候の影響も受けない。“土壌”も疲弊しないので安定的かつ効率的に野菜を生産できる。そのため1年間に、同じ面積の畑の約20倍もの収穫が見込めるというのである。

「みらいの15年3月期の売上はおよそ10億円で、昨年、千葉県と宮城県に新工場を設置しました。ところが、その後は野菜販売が伸びず資金繰りが悪化し、6月末の決済資金が確保できず倒産に追い込まれたわけです」

 急激な事業拡大が倒産を招く例は珍しくない。とはいえ、嶋村会長が進めてきたのは、27年前に大川総裁が出版した予言書『新ビジネス革命』に書かれていた言葉の実践だったのである。

■信者の証

 宗教ジャーナリストの藤倉善郎氏が指摘する。

「嶋村会長は、過去に何度も幸福の科学で講演をしたり、機関誌や教団の関連サイトにも登場しています。大川総裁の経営論を実践していることや、高校時代に『新ビジネス革命』を読んで、野菜工場という構想に目覚めたと語っています」

 確かに、同書にはこんな記述がある。

〈おそらく、植物の生産ということが工場内において大量に行なわれるであろうと思われます。(中略)人工照明ということがなされて、その中で適度な温度、湿度、水、肥料、こうしたものが与えられて、科学的にビルディングの中で、農業が行われるようになってくる〉

 が、先の記者は指摘する。

「工場での水耕栽培は、80年頃には農業関係者の間で話題になっており、85年のつくば科学万博には水耕栽培で育てたというトマトが展示されました。88年の時点では真新しい構想ではなかったはずですが……」

 当の嶋村氏は信者の証とされる、『正心宝(しょうしんほう)』というペンダントを身につけて講演に臨む姿が確認されている。そこで今回の倒産や教団との関係について尋ねると、

「何もないです」

 と、にべもない。一方、幸福の科学は、

「1988年に予言された『農作物工場の出現』は的中し、現在、この分野に数多くの大手企業が参入しております」(広報局)

 嶋村会長の失敗には触れず、あくまで予言は的中と言い張るのだった。

「ワイド特集 天地の狭間のドタバタ劇」より

週刊新潮 2015年7月16日号 掲載

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