JR北海道「廃線」で消える「健さん」!

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 凍(しば)れる大晦日の夜。紅白で歌う八代亜紀の「舟唄」を聞きながら、高倉健と倍賞千恵子がカウンターで肩を寄せ見つめ合う――。

 そんな名シーンでお馴染みの映画が、1981年公開の『駅 STATION』だ。劇中で健さんが何度も降り立ったのは、北海道北西部の増毛(ましけ)駅。この“名脇役”を擁するJR留萌(るもい)本線が、廃線の危機に直面している。

「度重なる事故を受け、JR北海道は第三者機関『JR北海道再生推進会議』を組織して、再建策を練ってきました。発表された改善案は、8つの赤字路線を順次廃止するもの。雪崩や落石が多い留萌本線が、最初の廃線候補になったのです」(地元記者)

 JR北海道は、1キロあたりの1日の輸送人数500人未満の路線を不採算路線とした。自治体の了承と代替の交通手段が決まれば、路線を廃止する方針なのだ。

「炭鉱や林業で栄えた最盛期は、100を超える路線が走っていた北海道の鉄道も、現在は13を数えるのみ。廃止案がすべて実行されると、道内の鉄道網は大正時代に逆戻りしてしまう」(同)

 留萌本線以外で廃止候補となったのは、宗谷本線・名寄~稚内間、根室本線・滝川~新得間と釧路~根室間、釧網(せんもう)本線・東釧路~網走間など。宗谷岬に富良野や釧路湿原など、観光客に人気のエリアを走る鉄路も含まれる。

「バスなどの公共交通を確保して高齢者や学生などの足を守るとJRは言うけれど、厳冬期は地吹雪で車が立往生する地域。駅がなくなれば不便になり、過疎化が進むのは避けられません」(同)

 廃線候補には、健さん最後の北海道を舞台にした映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケ地・根室本線の幾寅(いくとら)駅も含まれる。多くの人びとに北への憧れを駆り立てた、旅情溢れる情景がまたひとつ失われていくのか。

週刊新潮 2015年7月16日号 掲載

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