【相模原女性死体遺棄】白百合女子大卒「資産家令嬢」が異臭遺体を埋めた三角関係

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 渋谷区の豪邸に住む男(29)と白百合女子大卒の令嬢(23)。一見、お似合いのカップルのようで、共同作業は男の元カノの遺体を運んで埋めること。しかも、元カノの男児は端から行方不明で……。謎めいた三角関係の背後には、ペテン男の嘘八百とDVがあった。

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 西洋の宗教画には「受胎告知」という定番のテーマがある。大天使ガブリエルが聖母マリアに、“聖霊のしわざ”でイエスを身籠ったことを知らせる瞬間を描いたもので、マリアのそばには必ず白い百合が描かれている。白百合は純潔や清楚の象徴だからである。

 フランス発祥のカトリック修道会が創立した白百合女子大がその名に籠めているのも、同じ意味なのは言うまでもない。お嬢様学校たるユエンであるが、それが「死体遺棄」とは、建学の精神との隔たりが大きすぎる。だが、ともかく、6月25日に死体遺棄容疑で逮捕された秋山智咲は、昨春、この大学の文学部英語英文学科を卒業していた。

「大学4年の2013年7月19日ごろ、交際していた佐藤一麿(かずまろ)と一緒に、当時25歳だった阿部由香利さんの遺体を、神奈川県の相模湖近くの墓地に運び、穴を掘って埋めた。秋山が住んでいた世田谷区のマンションの防犯カメラには、遺体を包んだと思われるブルーシートを2人が運ぶ様子が映っていました。実際、遺体を運ぶレンタカーを運転したのも彼女だし、彼女が供述した場所から遺体が見つかったのです」

 捜査関係者がそう語るように、智咲が死体遺棄に関わったことを疑う余地はない。ところが彼女は、

「“犬の死体だと思っていた”と供述している」(同)

 ほかならぬ自分の部屋から遺体を、しかも後述するように腐臭のする状態で運び出しながら、それを犬と思っただなんて、聖母が肉体を交えずに身籠ったと信じる以上におめでたいではないか。だが、大胆な“犯行”に関わってからの智咲の行動は、事件の発覚を恐れるという犯罪心理学のイロハに照らして、説明がつかないことが多いのだ。

 たとえば、6月1日と15日の2回、テレビ静岡で智咲が出演する映像が放映されていた。同局の松下秀樹編成局長は、

「21時54分から、アウディがスポンサーの天気予報のバックに流れました。アウディが選んだお客様の映像を弊社が撮って放映したもので、秋山家が同車のオーナーだったのではないでしょうか。容疑者とヨガのインストラクターが、アウデイに乗ってビーチに到着後、歓談する内容でした」

 と語るが、事件の発覚を恐れずにテレビに顔をさらしたなら、大胆不敵なことこのうえない。また、秋山家と親しい近隣住民は、

「ちいちゃん(智咲)が送検されるときの映像で、顔を隠したりしていないのは、逮捕されるなんて思っていなかったからです」

 と言って、こう続ける。

「秋山家の門に“防犯カメラ作動中”って看板があるのは、佐藤一麿がちいちゃんと別れてからストーカー化したので、その対策用に設置されたんです。富士署にも相談して被害届も出していたんですが、遺体で見つかった阿部さんが行方不明になった件で佐藤の名前が浮上したとき、被害届を出していたばかりに、ちいちゃんが佐藤の元カノとして捜査線上に浮かんだらしい。彼女は富士署に呼ばれたとき、ストーカーのことを聞かれるだけだと思って“ちょっと行ってきます”と言って出かけ、身柄を拘束されたんです」

 警察への警戒感はまるでなかったというのだ。

 最近も智咲はツイッター上に自分の顔を頻繁にさらし、新たな婚約者との交際を惚気(のろけ)ていたが、それも怖いもの知らずゆえか、恐れる必要を感じなかったのか。だが、その謎はあとで解くとして、まずは彼女の生い立ちを辿りたい。

■「蹴って婿入り」

 静岡県富士市の400坪を超える敷地に、入母屋屋根の豪壮な屋敷を構える秋山家。近所の人によれば、

「10年ほど前に亡くなった先代がお茶のほかに、この地域で初めてしきみ(香花)を作り始め、商売を軌道に乗せたんだ。今の主人はやり手の実業家で、九州に茶の苗を売ったり、静岡市に数千坪の土地を持っていてコンビニに貸したりしていて、去年、50代前半の若さで富士市農協の専務理事になった。奥さんは智咲ちゃんの3つ下の妹が中高一貫校に通う間、毎日ベンツで駅まで送っていたな。主人も1200万円くらいのベンツに乗っている」

 いかにもそんな家庭の長女らしく、智咲は幼いころから書道やピアノを習い、

「合唱コンクールなどでピアノを弾いていた。吹奏楽部でアルトサックスを担当していたけど、ほとんどの部員が学校の楽器を使っているなか、智咲だけはマイサックス。勉強も定期試験で上位の常連だし、小中学校通じて皆勤賞でした」

 とは中学の同級生の証言。家族での海外旅行も頻繁だったとか。県立高校時代は書道部に所属し、達筆に磨きをかけたという。

 白百合女子大に進むと放送研究会に所属。女子アナ志望を公言していたというが、そこで図らずも、佐藤一麿との接点が生まれることになった。

 渋谷区上原の60坪近い敷地に建つ3階建で、時価3億円近いという豪邸に両親と同居していた一麿は、

「高そうなスーツを着て、歩きながら電話で“私(わたし)的にEXILEを推します”とか“明日の会議には間に合いません”とか話していた。駅のホームでは“フジテレビの佐藤です”なんて言っていました」

 と近所の住人。智咲が憧れる放送業界人を気取っていたのだ。ところが、通うのは都内のコーヒーショップで、港区内のスターバックスでこの春までアルバイトをしていたときは、

「ドン小西のd.k.fブランドなどホストが着るような服で出勤し、仕事中も仕事後も店に来る女の子をナンパしていた。うぶで何も知らなそうな子に“オレは慶応のSFC(湘南藤沢キャンパス)の大学院に通いながらここでバイトしている”と言い、食いつく女の子を待つんですね」

 と、行きつけの客。どうやら、フジテレビと慶応が一麿の常套句だったようで、実際、それは智咲の前でも語られていた。

「佐藤は一昨年6月、お茶の挿し木のシーズンで人手が足りないとき、一度ここに来て秋山家の農作業を手伝ったことがあります」

 とは、秋山家と親しい先の住民の話だが、秋山家行きつけのすし屋の主人が話を継いで言う。

「秋山の主人は“今度、東京から智咲の彼氏が来るから連れてくるよ”と前々から言っていて、主人と奥さんと智咲ちゃんと佐藤の4人できた。主人は“慶応を出てフジテレビに入社が決まっているのに、それを蹴ってうちに婿入りしてくれるんだ”って言って喜んでたよ。だけど、俺は48年もカウンターで人間を見てるからな。あれは詐欺師。女房と“そんなうまい話があるか”って話したんだ」

 案の定、父親がすし屋を再訪した際は「あの野郎はダメだ!」と吐き捨てたという。2人は別れ、前述のように一麿はストーカー化したわけだが、一方、智咲には新たな恋が芽生えた。

「智咲は結構モテて、いろんな男の子と途切れることなく付き合っていましたが、婚約者はそのひとり。バスケット部で、中3のときの同級生です」

 そう語るのは中学時代の別の同級生で、近所の住人によれば、彼は堅実な道を歩んでおり、

「沼津工業高専から北大へ3年次に編入し、大学院に進んで情報系の勉強をしています。彼の修士課程修了を待って来年5月に結婚する約束をしていました。母子家庭なので、智咲ちゃんのお父さんが学資を援助してあげています」

 だが、改めて言うが、新たな恋は「死体遺棄」ののちに芽生えたのである。

■「120万円騙し取られ」

 さて、実は一麿は、フジテレビとは縁もゆかりもないが、放送業界と無縁とまでは言い切れない。彼の母親は文化放送に勤めていたからである。彼女の知人が、

「入社時はアナウンサーで、二十数年前からは番組制作を担当し、小倉智昭さんの番組なども担当していました。何年か前に定年を迎えましたが、嘱託として仕事を継続し、息子さんが逮捕される前日まで働いていたはずですよ」

 と言えば、文化放送出身のみのもんた氏も、

「彼女は僕の後輩でね、入社時から“野暮な文化放送にどうしてこんなパリジェンヌみたいな子が”って評判でした。着ている服も高そうなものばかりでね」

 と述懐する。一麿も母親の話をもとに、虚言を構築しやすかったのかもしれないが、それにしては、早くから行動が荒んでいた。

「小学校3、4年のころ、電柱の陰に隠れて人の家を覗いているので、“何してるんだ”と聞くと“好きな子の家を見てる”って」

 そう言うのは小学校時代の先輩。中学の同級生も、

「すれ違う人に“どうも”とか声をかけ、いなくなると“あいつ死ね!”とか悪口を言う。“芸能人のサインをもらった”とか言って女の子の気を引いたりもしていたけど、現物は見たことがありません」

 と挙動不審ぶりを指摘したうえで、続ける。

「家に行くと、共稼ぎの両親の代わりにお手伝いさんがいた。部屋にはスター・ウォーズなどのフィギュアが数十体も並び、AVも50~60本はあった。本棚は4段のうち2段はエロ本が占め、親が何も言わないのか不思議でしたね」

 高校を卒業すると、

「“フジテレビで働いている”と言っていて、成人後は、会社を立ち上げようと誘ってきました。事業内容はスカトロ系エロビデオの制作と販売で、“女の子は俺が用意するから、機材を買う金を出してくれ”と言われ、100万円を封筒に入れて渡しましたが、何カ月たっても“準備している”って。お金は今なお返ってきていません」(同)

 このとき、やはり出資を持ちかけられた別の同級生の母親が言う。

「一麿君は同級生3人に声をかけ、月給を40万~50万円払うと言ったそうで、大学4年だった息子は信じてしまった。お年玉など13万円を渡したのが最初で、次はアコムの無人店舗で50万円を借りさせられ、ついには大学の前期の学費50万円をむしり取られた。学費納入日までには返すと言いながら返済はなく、息子は大学を中退して、4年も引きこもるハメになったんです。終いには一麿君が作ったカンペ通りに祖母に電話させられ、祖母が送ってきた10万円を奪っていった。息子は120万円以上騙し取られた挙句、人生まで変えられてしまいました」

 あたかもDVによって妻を支配する夫のように、同級生に圧力をかけ、間断なく金をむしり取るのだという。みの氏は、

「アナウンサー志望の若い女の子が、男に騙されるのはよくある話。夢とか憧れがある仕事だけど、そんなに甘いもんじゃない」

 と言うが、実際、田舎の令嬢をダマすことなど、赤子の手をひねるより簡単だったのかもしれない。

■「DVが怖くて」

 ところで、遺体で発見された阿部由香利さんは、東京都青梅市で生まれ、

「給食センターで働く父親と、近所のスーパーでパートを務める母親のもとで育って、いつもしっかり挨拶ができる子でしたけど、高校は中退してしまった」

 と近所の人。そんな彼女には、生きていれば9歳になる長男がいた。その子の父方の祖父が語る。

「高校卒業後、専門学校を中退した息子とできちゃった結婚し、06年4月に出産しました。私の家で養生したあと、しばらく母子で青梅にいました」

 青梅の居酒屋の店主によれば、そのころ、

「由香利さんは2、3回、実のご両親と赤ちゃんと一緒に来ました。お父さんはまだ30代だったと思いますけど、“この歳でもう孫ができたんだよ”と嬉しそうに言っていました」

 祖父の話に戻ると、

「その後、国分寺市で親子3人で暮らしましたが、出産から1年経つかどうかで別居し、離婚調停になったのです。その間、実の母親も由香利さんとうまく連絡が取れなかったらしく、“新宿にいるようだ”と息子に告げていたようですが、住まいのことか職場のことかはわかりません。別居してからは、私も息子も孫には会っていません」

 離婚成立と同じころ、由香利さんは一麿と出逢っている。ちなみに長男は、07年2月の10カ月健診を受けたのち、同年9月に彼女の母親が会ったのを最後に、杳(よう)として行方が知れないという。新宿歌舞伎町や渋谷などの風俗店を転々とするようになった彼女は、新宿の1Kのアパートに住むが、そこに長男が住んだ形跡は確認されていない。

 由香利さんと一麿との交際は数年におよんだが、12年末、彼女が母親に電話で金を無心して断られたのち、捜査関係者によれば、

「13年の前半には、交際が終了していたようだ」

 その間、2人の間に金銭トラブルが起きた可能性が高いというが、ともかく、

「遺体の首に内出血の痕があったので、死因は首を絞められたことによる窒息死だと見られる」(同)

 という由香利さんの遺体は、どういうわけか智咲が住む6階建てマンションの5階の部屋に置かれ、異臭騒ぎが起きていた。住人のひとりが証言する。

「6月3日、警視庁捜査一課の刑事さんがきて、“2年前の異臭騒ぎについて聞きたい。上の階で大型犬が死んでいたそうですが、そんな犬はいたか”と聞かれました。私は海外にいて知りませんでしたが、大家さんに聞くと、部屋で大型犬が死んでひどい悪臭を放つようになって、その階の住人が抗議し、部屋の住人がブルーシートに包んで運び出した。そのためにエレベーターの中にも臭いが籠り、部屋ばかりかエレベーターの内装まで交換が必要になって、部屋の住人の親が高級車で乗りつけて全部弁償した、という話でした」

 床面積は約40平方メートル、賃料が月14万5000円もする、学生には贅沢すぎる部屋を、なにゆえ智咲はそのように使ったのか。彼女の父親の話を漏れ聞いたとして意外な話をするのは、近隣住人のひとりである。

「佐藤は“フジテレビに入社すると忙しくてなかなか会えなくなるから”と、自分の家の近くに引っ越すように智咲さんに命じ、両親が反対しても、彼女は自分で新しい部屋を決めてしまった。でも、実は部屋の鍵は佐藤が持って、彼女は中に入るなと言われていたんです。ある日、佐藤は“犬の死体だからしばらく置かせろ”と、ビニールシートに包んだものを智咲さんに一緒に運び込ませ、1カ月後に腐敗すると、今度は運び出すのを手伝わせた。その間、彼女は最後まで犬だと聞かされていたし、DVが怖くて佐藤には逆らえなかったというんです」

 その後、部屋を引き払ったのはもちろん、一麿との関係も清算したが、ペテン男に背負わされた十字架は、智咲にとってあまりにも重いと言うほかあるまい。

週刊新潮 2015年7月9日号掲載

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