ギリシャ危機で「日本株」はどこまで凹む?

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 2009年に発覚した“財政赤字の粉飾”に端を発するギリシャ危機だが、いよいよデフォルト(債務不履行)か、という局面にまで進展した。

 これを受け、6月29日の東京株式市場は、前営業日比596円20銭安の2万109円95銭と、全面安の展開に。さらにニューヨーク市場ではダウ平均株価が350ドル安、ヨーロッパの各国市場でも株価は3%前後下がる。30日の日経平均は125円高と反発して終了したものの、“世界同時株安”が進むのでは、との懸念は残った。

「そもそもは6月26日、EUの財政再建策をギリシャが受け入れれば、6月末で終了予定の第2次金融支援を11月末まで延長し、総額155億ユーロ(約2兆1000億円)を4回に分けて追加融資するという提案をチプラス首相が国民投票にかけると表明し、事実上、EUの支援が6月30日で終わったことがきっかけ」(経済部記者)

 同日は、IMF(国際通貨基金)に対する約15億ユーロの返済期限だが、チプラス首相はテレビで〈支払えない〉と明言。さらに7月20日、8月20日にECB(欧州中央銀行)が保有するギリシャ国債約67億ユーロの償還も控えており、

「7月5日の国民投票で、EU提案を“イエス”と受け入れない限り、デフォルトは必至。さらに共通通貨ユーロからの離脱も起こり得る状況です。フランスやイタリア、EUは、ギリシャ国民に“投票はイエスを”と必死に呼びかけていますが……」(同)

 国民投票の行方次第では、日本市場にさらなる大きな影響が出るのか――。

■ギリシャの影響は限定的

 これに対し、マーケットはギリシャのデフォルトを織り込んでいるものの、これは株価調整のきっかけに過ぎないと見るのが、株式評論家の植木靖男氏である。

「株価は1年続けて上がったところで調整局面に入るのが通例です。日経平均は昨年5月の1万4000円台から2万円台に乗りましたが、調整に入らず、企業の好調な業績や、外国人投資家の買い越しの多さ、円安、それに日銀の買い入れもあり、上昇の“延長戦”が続いていた。ギリシャ危機はちょうどいいタイミングで、延長戦の終了を告げることになったのです」

 ユーロに対する信用不安が大きくなれば円高になり、輸出関連株を中心に株価が下がる可能性が出てくる。

「7月から8月までは上下を繰り返して、一時的に1万9000円割れもあるでしょう。でもその後、上昇局面になり、年末には2万1000~2万2000円になると見ています」(同)

 一方で、

「ギリシャ危機の日本株への影響は一過性のもの」

 と言うのは、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏だ。

「ギリシャはこの5年、EUからの“追い貸し”で自転車操業を続けてきた。それは国民投票の結果がどうなろうが変わらず、EUは今後も、ギリシャを生かさず殺さず自転車操業させていくしかない。29日の株安は、デフォルトという最悪のシナリオを読み込んだ上でのもので、そもそもギリシャが日本に直接及ぼす影響は何もないのですから、下げも限定的」

 今後の株価は、

「8、9月には2万1000円台半ば、年末には2万2500~2万2600円にまで行くと思います」(同)

 その上、秋には日本郵政の上場という大型案件が控えている。

「この上場が失敗すれば、アベノミクスの失敗と見られることになり、安倍政権にとって大きなダメージになる。それを回避するためにも、政府・日銀はあらゆる手で株価の維持上昇に全力を注いでくるはずです」(経済ジャーナリストの田部正博氏)

 ギリシャ情勢に一喜一憂しないのが最善の策か――。

2015年7月9日号 掲載

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