59年ぶり握手「米」「キューバ」それぞれのお家事情

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 まさに「歴史的な握手」と言ってよいだろう。

 4月11日に開かれたアメリカとキューバの首脳会談は、実に59年ぶり。オバマ大統領が生まれた年に、両国は国交を断絶しているのだ。

「親米的だったキューバで革命政権が成立し、61年に断交。62年には核戦争寸前のキューバ危機が発生、82年にはアメリカがキューバをテロ支援国家に指定しています。キューバはキューバで『反米の盟主』を自ら任じ、150キロほどの近さなのに両国は長らく犬猿の仲でした」(国際部記者)

 まさに冷戦の「歴史」だが、にわかの融和に到った背景には、キューバの窮状があることは既に本誌(「週刊新潮」)でも触れている。

 中部大学国際関係学部教授の田中高氏が言う。

「ベネズエラから格安で供給される原油が激減しています。経済制裁の影響などから物資も少なく、平均月収は20ドル(約2400円)ほど。街を40~50年代のアメ車が走り、“クラシックカーの宝庫”などと言われていますが、それは新車を購入できないからです」

 アメリカはと言えば、オバマの「レガシー(遺産)作り」もさりながら、来年に大統領選を控えている。

「両国の国交正常化に6割の国民が賛成しています。大統領が経済制裁解除へと動いた場合、議会を握り、反対派も根強い共和党も、強硬には出にくい」(筑波大学の遅野井茂雄教授)

 かくて民主党は「偉業」をアピールできるわけだ。

 キューバの民主化を目的とした経済制裁も、なし崩しになりそうだという。

「アメリカの“裏庭”にあるキューバに、ロシアや中国が急接近していたからです」(同)

 昨年7月上旬にはプーチンが、同下旬には習近平が、相次いでキューバを訪問。それぞれに同国との蜜月ぶりを示した。

「それらがアメリカの背を押したということはあるでしょう」(前出・田中氏)

 日本の岸田外相も4月下旬、現職の外相として初めてキューバを訪問の予定だ。

「キューバは教育水準が高く、医療も充実。大手自動車メーカーを始め、日本企業の関心は高いですよ。なんと言っても1100万人分、50年も手つかずの市場ですから」(同)

 ビジネスの前には冷戦の歴史も霞む、か。

週刊新潮 2015年4月23日号掲載

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