元サイ・ヤング賞投手の悪い予言「田中将大の肘は悪化する」

スポーツ 野球

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 日本のプロ野球投手における最高の名誉といえば「沢村賞」。メジャーリーグでそれに当るのが「サイ・ヤング賞」だ。ペドロ・マルチネス氏(43)は、現役時代、この賞を3度も獲得した名投手として知られる。そんな人が、今年、ヤンキースの開幕投手をつとめた田中将大(26)について「彼の肘は今シーズンのどこかで悪化する」と、語っているのだ。

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 田中の右肘内側側副靭帯部分断裂が発覚したのは昨年7月。結局、手術はしなかったものの、今年のマー君は大丈夫か? と心配する日本のファンは少なくない。その疑問に答えるかのように、開幕直前、マルチネス氏はラジオのインタビューで、こう述べた。

「1年を通じて健康でいられるとは思えない」

「速球を投げるのを躊躇(ためら)っているし、変化球もキレがあるものではない」

 この悪い予感に対し、「偉大な投手に指摘されて光栄」と、マー君は大人の対応をして見せたが、

「今の田中は、誰が見てもマルチネスのように感じるでしょう」

 と話すのは、大リーグ研究家の友成那智氏である。

「オープン戦での直球は、ほとんど130キロ台。球威が落ちています。そのため、怪我の前とは投球スタイルをガラリと変えています。これまで決め球にはスプリットを使い、三振を沢山取っていた。ところが怪我の影響で投球制限が90球に減り“打たせて取る”投手に生れ変ろうとしています。早いカウントから僅かに曲がるツーシームでゴロの山を築く、省エネピッチャーを目指している」

■酷使せざるを得ない

 さて、肘の状態はどうか。これまで100人以上のプロ野球選手を手術した横浜南共済病院の山崎哲也スポーツ整形外科部長によれば、

「靭帯が損傷するとは、分かり易く言えば、パンツのゴム紐が伸びてしまったような状態。関節を繋いでいる靭帯が伸びてしまうと、痛みや炎症を引き起すのです。田中投手が受けたPRP治療(自己多血小板血漿療法)は、血液の成分である血小板や血漿に含まれる人間の組織の修復を促す成長因子や接着因子などを濃縮し、患部に注射するというもの。それにより、ピッチングができるまでに回復したということは、一定の効果があったのでしょう。ただし、あくまで症状が改善されただけであって、100%元の状態に戻ることはあり得ません」

 ならば、「トミー・ジョン手術」と呼ばれる靭帯再生手術を受けた方が良かったとの意見もある。こちらの成功確率は90%で、復帰まで丸1年はかかる。再び友成氏の話。

「ヤンキースの先発陣で計算できそうなのは、田中と(マイケル・)ピネダの二人だけ。苦しい台所事情のため、田中は大事にしたいが、酷使せざるを得ない状況です。ちなみに、ESPN(スポーツ専門チャンネル)は、ヤンキースは東地区の最下位、田中は12勝8敗と予想しています。そんな中で無理をすれば、次は靭帯が完全に断裂する危険もあります」

 6日の開幕戦では、マルチネス氏の悪い予言が早くも当たって、4回5失点で負け投手になった。さっさと手術しておけば良かった、なんてことにならなければよいが。

「ワイド特集 人間の証明」より

週刊新潮 2015年4月16日号掲載

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