独機墜落で甦った「逆噴射」教訓は生きているのか

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 独機の墜落事件で、いやでも甦るのが「逆噴射」の悪夢である。わが国でも1982年に、心に病を抱えていた機長によって日航機が墜落させられた。その教訓は生きているのか――。

 世界で精神疾患者に飛行機の操縦を許している国は一国もない。それが最も先進的で、ルールに厳格なドイツで起きてしまった。

 149人を巻き添えにしたアンドレアス・ルビッツ副操縦士(27)はマラソンにも参加し、一見健康そうだったが、精神科医院の受診歴があったのである。

 所属していたジャーマンウィングス社では精神面での定期健診はなく、会社もルビッツ副操縦士の既往歴を把握していなかった。医師から会社や政府の航空当局に通知するシステムはなかったのだろうか。

「パイロット性善説に立つ仕組みです。病は究極の個人情報。本人の頭越しに会社や当局に診断結果を知らせるべきではないという文化なのかもしれない。診断書は本人が会社に提出するルールなのでしょうが、あの副操縦士は握りつぶしてしまいましたからね」(航空評論家の青木謙知氏)

 過剰に個人情報を保護しようとする文化が、乗客の命を奪う土壌になっていたとしたら、何とも皮肉だ。

 LCC(格安航空会社)の参入でパイロット不足が常態化している。空の安全を確保するには、どんな対策を講じるべきなのか。

 逆噴射による墜落事件をキッカケとして、84年に一般財団法人航空医学研究センターが設立された。パイロットの医学的、人間工学的な問題の研究を通して安全運航に寄与することが目的である。同センターによれば、

「航空機乗組員は、航空法で義務付けられた航空身体検査を、半年ないし1年に1度は受けなければなりません。日本では、国の指定を受けた航空身体検査医が乗組員を診察し、国の基準に適合しているかどうかを判断します。精神面の検査は精神科医が行ない、指定医が適否を下すのです」

 パイロットの精神面の検査は、世界よりも日本の基準が厳しいようだ。

週刊新潮 2015年4月9日号掲載

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