爆買い来日の「中国人」が日本を褒めちぎる美点一覧

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 今年もデパートや家電量販店は“爆買い”する中国人観光客でごった返していた。日本でもすっかり風物詩になった「春節(旧正月)」の光景だが、最近は買い漁るだけが目的ではない中国人客も増えているという。彼らが“発見”した日本の美点とは――。

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「4日前に成田に着いたんだけど、空が青くてホッとしました。それと空気が澄んでいる。北京はひどいですからね。中国では反日が叫ばれているというけど、私たちは日本がいいと思うから来ているんです」

 そう話すのは、北京からやってきた30代のOL2人組だ。両人ともこれで8回目の訪日だという。

 ご存じ、今年も中国人の民族大移動「春節」(旧正月)の時期である。かの国では2月18日から連休が始まり、これが1週間ほど続く。春節の前にはボーナスも出るので、懐が温かくなった約519万人の中国人がこぞって国外旅行に出かけるというわけだ。

「日本を訪れた中国人は昨年1年間で約240万9200人でした。これは、韓国、台湾からの訪日客に次ぐ数字ですが、中国政府が反日を煽っているのに83%という増え方です。このぶんだと、今年は300万人を突破する勢いです」(観光庁の関係者)

 そんな中国人観光客の主な目的といえば、やっぱり買い物で、都内のデパートや家電量販店には今年も大勢の中国人客が殺到している。たとえば、銀座にある「ラオックス」には10分おきに大型バスが乗り付け、中国人客がどんどん吸い込まれてゆく。1個3万~5万円するウォシュレットを何個もまとめ買いしたかと思えば、888万8888円と縁起のいい数字の値札がついた高級腕時計がいとも簡単に売れてしまう。

 その一方で中国人観光客といえばトイレを流さなかったり、植え込みで子供に大小便をさせる、旅館からドライヤーを持ち去るなどマナー違反も目立ったものだ。だが、昨年、中国人向けの数次ビザが緩和されたこともあって、買い出しだけではなく、サラリーマンやOLがリピーターとなってやって来るようになったという。

 日中関係の書籍を出版する日本僑報社編集長の段躍中氏が言う。

「この春節の日本旅行の相場は1人10万円~15万円というのが多い。これは、中国の普通の会社員でも払える値段です。近くて安くて安全で、しかもご飯も美味しい日本を気に入って気軽に来る人たちが増えているのです」

 そんな中国人客らはニッポンのどんなところを褒めるのだろうか。よく言われるのは、清潔さと秩序正しさだが、銀座を歩いていた瀋陽市出身の中国人医師(65)も感心しきりである。

「路上はもちろん、レストランの床にもゴミがないし、公衆トイレは常に清潔です。使う人たちが綺麗に使おうとしているのが分かる。それと道路が本当に安全。私は日本車を持っているんですが、この歳だからもう何年も前から運転していません。皆、信号を守らないし、運転が乱暴だから本当に危ないんです。でも、日本に来たら今度は車で走ってみたいね」

 有名な話だが、中国のトイレといえば扉がなかったり鍵がないのはよくあること。もちろんトイレットペーパーは各自持参だ。そんな国から来たのだから、備え付けのトイレットペーパーからいい香りがすることに単純に感動したりする。そうかと思えば音を消すための擬音装置(「音姫」)を目の当たりにして、ここまでやるのかと仰天する中国人も少なくない。

 マンションのゴミ集積所に目が釘付けになったという人もいる。

「ガラス瓶にアルミ缶、スチール缶、雑誌・新聞と本当にこまかく分けられている。ペットボトルも飲み残しを捨ててキャップを外しているのを見ると驚きの一言です。中国でも最近は都市部で燃えるゴミ、燃えないゴミぐらいの分別があるのですが、適当だし、ここまではやらない。あれは、もうゴミ捨て場とは言えないほどです」(大連市から来た40代のサラリーマン)

 また、外国人にとって異文化体験の代表が共同浴場だが、日本人にとっては何でもないことに感銘を受けたりする。富士山麓の富士河口湖町にある山岸旅館のフロント担当者が言う。

「中国のお客さんは、脱衣場で服を脱ぐと、よく服の入った脱衣カゴをそのまま洗い場に持ち込んでしまうのです。目の届くところにカゴがないと不安なのですね。“誰も盗むようなことはしませんから大丈夫”と説明すると一様に感心してくれますね」

■馬刺にびっくり

 旅行の楽しみの一つ、食事はどうだろう。生ものが食べたくてやって来たという上海出身のOLが言う。

「中国でも最近は寿司屋があるので、生魚を食べたことのある人が増えています。しかし、向こうで刺身を食べるのは恐怖です。焼肉も生臭いので、赤いところを残した焼き加減はタブー。もちろん、生肉なんてものはまず食べられません。しかし、こっちで馬刺を食べて美味しいのにびっくり。中国では馬という動物の肉を、しかも生で食べるなんて考えられないことですから」

 中国の寿司屋では巻物が一般的なため、シャリの上にネタが乗った握りが出てくるとポカンとしてしまう人も少なくないという。

 浙江省から妻と息子とともにやって来た50代の会社役員は、2月22日に開かれた東京マラソンに参加した。

「プライベートで何度も来ているんですが、走るために来たのは初めてです。いやあ感動でした。有名選手だろうが、私みたいな素人だろうが皆フレンドリーに応援してくれる。中国でもマラソンを走ったことがありますが、42・195キロにわたって沿道に人が途切れることなく、延々と応援してもらえるなんて初めてです。順位? それは聞かないでほしいけど来年も走りたいね」

 中にはお世辞も交じっているだろう。だが、ほとんどの中国人客が日本を心から楽しんで帰ってゆくのも事実だ。何かと言えば反日カードを振りまわす習近平主席に聞かせたい言葉ばかりだが、先に登場した医師は一つだけ不満があると言う。

「何しろ中国人の観光客が多すぎるよ。次は春節を外して来たいね」

週刊新潮 2015年3月5日号掲載

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