再高騰で「東京五輪」までに1.5倍になるゴールド投資のリスク

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 もはやゴールド投資の時代は終わった――。昨年まで実(まこと)しやかに囁かれたそんな声も、鳴りを潜めつつある。再び上昇局面を迎えた“金”は、やはりカオスの時代に相応しい投資先なのだろうか。

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 1月21日、貴金属大手・田中貴金属工業は、金の小売価格を1グラム当たり5344円(税込)に設定した。第2次石油ショックによって景気不安が列島を覆った1980年に迫る、約35年ぶりの高値だという。

「直接的な原因は、円安とスイスフランの急騰によって金融市場に衝撃が走り、安全資産の金に買いが集中したこと。ウクライナ危機やイスラム国の台頭など、国際情勢は難題山積なので金需要は今後も増すと考えるべきです」(経済部デスク)

 まさしく“有事の金”の面目躍如である。然らば、再高騰している金に初心者が手を出すのは吉か凶か。

 貴金属アナリストの亀井幸一郎氏に尋ねると、

「個人的には金を持つことに賛成です。日本で金に最も高値がついたのは80年1月で、小売価格(1グラム)は6495円を記録しました。それ以来、主要国で自国通貨建ての金価格が最高値を更新していないのは日本だけなのです」

 経済アナリストの豊島逸夫氏も太鼓判を押す。

「現在の金価格は長期的に見れば底値圏。東京五輪が開催される2020年には7500円になると確信しています。シニア世代が資産運用を始めるには、いまが絶好のタイミングです」

 豊島氏が敢えてシニア世代にゴールド投資を勧めるのには理由がある。

「それは“相続資産”として極めて優れているからです。ポイントは3つ。まず、金は不動産と違って、いくら保有しても固定資産税がかからない。次に、“小分け”にすることができる。たとえば10万円の金貨を500枚持っていれば、子や孫の数に応じて分配すればいいのです。これが5000万円の土地だと諍いの原因になりかねません。さらに、お金が必要な時に貴金属会社ですぐに売却できることも大きなメリットです」

 ただ、金が安全資産と分かっていても、これだけ株高が叫ばれると、一獲千金の誘惑に駆られるのも無理からぬ話だろう。

「私はいつもこう話しています。アベノミクスを信じて株を買いながら、備えとして金も買いましょう、と。アベノミクスには円安とインフレという2つのリスクがある。その点、金はそもそもドル建て資産なので円安になれば価値が高まり、インフレにも強い」(同)

 では金自体のリスクは?

「金の短期的な売買はプロでも“8勝7敗”が関の山。ドル建ての金価格と、為替相場という2つの変数を見極めるのは、素人には困難です。また、金は乱高下を繰り返すので高値掴みしないようまとめ買いも禁物。毎月一定額を買い増して長期保有するのがベストです」(同)

 経済誌の情報に左右されるのもタブー。買ったら忘れる、“バイ&フォゲット”の精神が大事だそうだ。

「特集 カオスの時代に俗人的な『大人のお金』ガイドブック」より

週刊新潮 2015年2月19日梅見月増大号掲載

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