「デヴィ夫人」の「自決と自己責任」論は暴論か?

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 思わぬ箴言(しんげん)とでも言うべきか。日頃は芸能界の「厄介者」として疎(うと)まれることも多いデヴィ夫人(74)。だが、今回の人質事件に対する見解を彼女が披露すると、暴論と非難される一方、「よくぞ言ってくれた」と共感する声が上がったのだ。

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 イスラム国の非情な仕打ちを受け、被害者への同情ムードに包まれるなか、デヴィ夫人はこの空気に「ノー」を突き付けた。湯川遥菜さんに続いて後藤健二さんの殺害が迫っていた1月29日の夜、自身のブログで、こんな発信をしたのである。

〈皆さん冷静に考えてみて下さい。安倍首相が(中略)難民救済に2億ドル(236億円)の供与を表明したことが火種となり「イスラム国」が二人の日本人人質の身代金を要求してきたのです。とはいえ、そもそも殺害されたと言われている湯川遥菜さんと後藤健二さんがイスラム国に捕まっていなければこんなことは起きなかったのです〉

 こう「事実」を紹介し、

〈日本政府は過去再三に渡って危険地域に近づくなと警告をしてきました。(中略)しかも(後藤さんは)「自分の身に何か起きてもシリアの人を責めないで、自己責任をとる」というメッセージまで残しています〉

 と、人質の自己責任を力説した上で、後藤さんの実母の石堂順子さんについても苦言を呈したのだった。

〈自分の息子が日本や、ヨルダン、関係諸国に大・大・大・大迷惑をかけていることを棚にあげ、ひたすら安倍首相に「あと24時間しかありません。助けて下さい。」と訴えているのは、どうかと思います。ひたすら、地にひれ伏して、謝るべきではないでしょうか。それからです、母として安否を願うのは〉

 さらに彼女の「筆鋒」は鋭さを増し、

〈不謹慎ではありますが、後藤さんに話すことが出来たらいっそ自決してほしいと言いたい。私が彼の母親だったらそう言います。我が子を英雄にする為にも〉

 後藤さんの斬首後に改めてデヴィ夫人に尋ねたところ、自説を変えることなく、

「亡くなった2人の行動によって国会は止まり、国全体の動きが麻痺、莫大な経費もかかった。人命第一って、たしかにそうなんですけど、関係諸国が受けた迷惑は絶大です。皆さんセンチメンタルに浸るより、現実に目を向けるべきではないかしら」

 ジャーナリストの徳岡孝夫氏も、彼女の意見を「傾聴に値する」としつつ、

「もちろん2人の死は悼むべきですが、彼らを過剰に神聖化すると大事な点を見失ってしまう。2人がシリアに入った結果、テロの矛先が日本国内にも向けられようとしている。このことと2人の死は別の話です」

 デヴィ夫人の「自決と自己責任」論に、黄泉(よみ)の2人は何を思うか。

「特集 日本に宣戦布告! 『イスラム国』狂気の残響」より

週刊新潮 2015年2月12日号掲載

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