「湯川さん処刑映像」が非公開になった理由は「脱走兵」

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 なぜ、湯川遥菜さんの場合、処刑映像がユーチューブにアップされなかったのか。それは、未だ解けない謎として残されていた。実は、イスラム国に抵抗を続けている地下組織が、外国人兵士が処刑映像を持って脱走したということを明らかにしたのだ。

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 昨夏から始まった米軍の空爆によって、最大の資金源となっている油田が次々に破壊され、イスラム国の経済状況は悪化の一途を辿っている。さらに、長引く戦闘によって士気も低下し、兵士の脱走が相次いでいるという。

 在日シリア人に聞くと、

「シリア北部の街ラッカは、現在、イスラム国の首都ですが、昨年末、そこからの脱走を企てた外国人兵士100人が処刑されたことが報じられている。それだけではありません。トルコ国境近くにあり、交通の要衝であるコバニという街を、1月下旬、クルド人部隊が奪還に成功しました。現地からの情報では、イスラム国の兵士の遺体が200以上も転がっていたそうです。それも、戦闘によるものではなく、脱走しようとした兵士を射殺したと見られるということでした」

 残虐の限りを尽くすテロ集団も、内部崩壊を起こしているのかもしれない。

 しかも、脱走兵の存在は、湯川さんの処刑映像が公開されなかったことにも密接にかかわっているという。

 それを明らかにしたのは、イスラム国に徹底抗戦する、その名も『静かに虐殺されるラッカ』という地下組織だった。

 在日シリア人が続ける。

「その地下組織は、ホームページを開設しているのですが、1月27日に、サウジアラビア出身の兵士2人がイスラム国から逃げ出したことを伝えています。2人は、監獄から解放した捕虜に道案内をさせ、イスラム国と敵対するヌスラ戦線に加わった。しかも、メディア部門に所属していたため、イスラム国の残虐さを示す“証拠”を手にしていました。それは、“日本人”が処刑される映像だとされているのです」

 その時点で、処刑されている“日本人”となると、湯川さんをおいてほかにない。

 イスラム国に捕えられ、殺害された人質は7人を数える。だが、湯川さんだけは処刑映像がユーチューブにアップされなかったのは、イスラム国の手元からなくなっていたからということなのか。

「特集 日本に宣戦布告! 『イスラム国』狂気の残響」より

週刊新潮 2015年2月12日号掲載

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