「両親離婚」「生活保護」「兄の逮捕」で崩壊した19歳「爪楊枝男」の地図

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 無能警察よ、捕まえてみろ――。19歳の少年は、スナック菓子に爪楊枝を刺す動画をネット上に公開する一方、警察を執拗に挑発し続けた。18日の逮捕後、取り調べには素直に応じて“自作自演の犯行”だと仄(ほの)めかしている。だが、実は彼が逮捕・立件されたのは今回で3回目。一体、どんな家庭環境で育ったのか。

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 生活保護の受給者が88万2229人となり、過去最低と報じられた1995年。都内で、不動産会社に勤務する男性と、専業主婦の女性との間に男の子が生まれた。兄と2人の姉を持つ彼こそが、後の“爪楊枝男”だった。

 姉の喘息治療がきっかけで、神奈川県内の小学校に転校した少年には歳の離れた2人の妹と弟が生まれた。つまり、今時珍しい7人きょうだいの家庭で育ったことになる。だが、幸せは長続きせず、4年生の時に人生が暗転する出来事が起きた。彼は、その原因をネット上でこう告白していた。

〈父親が家に金を入れなくなった。両親は離婚して、母親が生活保護(の受給)を始めた〉

 小学生時代の同級生が当時を振り返る。

「彼の家は本当に貧乏で、袖の擦り切れた服を着ていることもありました。当然、携帯電話やゲーム機も持っていませんでしたね」

 小学校卒業後、地元中学に進学するはずだったが、入学式に彼の姿は見当たらなかった。その1年半後、

「小学校を卒業してから、あいつは東京にいる父親と暮らしていましたが、折り合いが悪くて戻ってきたようです。昔のような明るい面影はなく、しばらくすると学校にも来なくなりました」(別の同級生)

 2011年2月、中学3年生だった少年はネット掲示板に“通行人を3人組で次々にナイフで殺していく”と書き込み、威力業務妨害で逮捕された。全国紙記者によれば、

「逮捕から6日後、彼の兄が新宿駅近くでカッターナイフを振り回して現行犯逮捕されています。動機は、“弟がネット上で馬鹿にされたから”というものでした」

■「全然関係ない」

 神奈川医療少年院で1年3カ月過ごした少年は、退院後に再び父親と同居を始めた。が、13年6月、今回の事件と同じようにネットの動画サイトで“新宿駅、大阪駅、博多駅のいずれかで、無差別に人を殺害する”と宣言したのである。

「博多へ向かった少年は、途中の広島駅で弁当を万引きして逮捕されました。彼は、“仕事も見つからず、悪いことをしないで生きていても、明るい未来はないと思った。実際に、人を殺すつもりはなかった”と供述しています」(同)

 東京に戻り、威力業務妨害で再逮捕された彼は、昨年8月に愛知少年院を仮退院した。この時は父親の元に戻らず、三鷹市内にある自立支援の寮で一人暮らしを始めたのだった。寮の入居者が言うには、

「寮の中で最年少の彼は、口数も少なくて誰とも話しませんでした。お父さんからは月2~3回電話がかかってきていましたが……」

 中上健次の小説『十九歳の地図』のように、救済されるのか。彼の母親に話を聞くと、“帰ってください”と繰り返すのみ。父親は、

「もう、全然関係ないんだ」

 取り調べでも、まったく反省の色が見えない“爪楊枝男”。2~3年後、彼は再び娑婆に戻ってくるのだ。

「ワイド特集 男の顔は履歴書 女の顔は請求書2015」より

週刊新潮 2015年1月29日号掲載

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