妖怪・座敷わらしに出会える宿 宿泊したら自慢できる「日本の変な宿」紀行(5)

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 豪華な食事、癒しの温泉という月並みな“おもてなし”を享受するだけでは、旅は味気ない。泊った後は、ついつい他人に自慢したくなる。そんな、一癖も二癖もある宿を本誌記者が訪ね歩いた。

 限界集落に佇む古民家の宿で日本の原風景を堪能した後は“心の故郷”を探索しに、鳥取県米子市の皆生温泉「湯快リゾートかいけ彩朝楽」に向かった。「ゲゲゲの鬼太郎ルーム」が人気なのだという。隣町の境港出身の漫画家、水木しげる氏の快諾もあり、4室が「お化けの学校編」「妖怪たちの決戦編」「ねこ娘部屋」「目玉おやじ主催」と、水木ワールド全開なのだ。

「湯快リゾートかいけ彩朝楽」(鳥取県米子市)。
ゲゲゲの鬼太郎ルーム1泊2食付1万200円
TEL:0570-550-478

 お邪魔したのは「ねこ娘部屋」。布団に“ぬりかべ”が描かれ、天井に“一反もめん”が張り付き、鬼太郎と目玉おやじが描かれた押入れの襖を開けると、真っ赤な“枕返し”が、という凝りようだが、テレビがない。部屋の片隅になにやら幕があるので開くと、牙を剥き目を見開いたねこ娘の口の中にテレビが! とてもじゃないが、ゆったり観る気分になれません。

「メンテナンスは大変ですが、鬼太郎ルームに泊るお客様は、とても丁寧にお部屋を扱ってくださいます。布団をキレイにたたんで帰る方が多いですね。妖怪に見られているという気持ちになるからかもしれませんが……」(広報担当者)

 行儀よく過ごしたせいか、妖怪にうなされることなく、快適な朝を迎えられた。

■「確かに出る」宿

 一方、四国には“座敷わらし”が出る宿もあると聞き、早速向かう。愛媛県宇和島市の市街にある1日1組限定の「木屋旅館」がそれで、木造2階建ての旅館を丸ごと借り切れるのは珍しい。

 創業は1911(明治44)年で、後藤新平や犬養毅、司馬遼太郎、吉村昭も逗留したという。95年に廃業したが、江戸時代の旅籠(はたご)のような外観を持つ歴史的建造物を残そうと市が買い取り、2012年にリニューアルしたのだ。

 館内はルイ・ヴィトン大丸京都店を手掛けた建築家がデザイン。2階の床の一部には厚さ2・5センチのアクリル板がはめられ、1階が透けて見える。1階には20畳の大広間、2階には6畳と8畳の続きの和室が4つもあり、どこで寝てもいいそうだが、怖い……。座敷わらしは本当に出るのか。

「木屋旅館」(愛媛県宇和島市)。
1人1泊1万6200円~(朝食付・2名から)
TEL:0895-22-0101

 街でお金を落としてもらうために夕食は提供しない、というので、近所の飲食店に赴き、尋ねたが「確かに出る」と言う。不安が募ったが、「心が汚れていない子供にしか見えない」と教えられ、やっと安心して眠ることができた。

「特集 宿泊したら自慢できる『日本の変な宿』紀行」より

週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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