モンゴル体験のできる「ゲルの宿」 宿泊したら自慢できる「日本の変な宿」紀行(4)

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 旅行シーズン到来。“おもてなし”の宿は数あれど、ここに紹介するのは、国内でも唯一無二の体験ができる「変な宿」。泊った後は、ついつい他人に自慢したくなる。そんな、一癖も二癖もある宿ばかりを、本誌記者が訪ね歩いた。

 大衆演劇の観られる宿で異次元を味わった記者。異次元ついでに“異国の地”へ。大草原が広がるモンゴル――といっても、降り立ったのは大阪駅からJR福知山線丹波路快速で1時間強の篠山口(ささやまぐち)駅。そこから車で40分の地に「オータニモンゴルの里」(兵庫県篠山市)はあった。出迎えてくれた代表のスーチンドロンさんは、

「自分は日本で初めてゲルを建てたモンゴル人だ」

 と胸を張る。

「宿泊用に大小3棟のゲルがあって、1棟に3名から10名まで泊れます。オルゴという食堂用ゲルは直径9メートルと、一般的なゲルの2倍の大きさ。チンギス・ハンはオルゴを22頭の牛馬にひかせて、ヨーロッパまで遠征に行きました」

「オータニモンゴルの里」(兵庫県篠山市)。
1泊2食付9800円~
TEL:079-592-0051

 ついに篠山もチンギス・ハンの支配下に? ともあれ、オルゴで食べる本場の料理が宿の自慢だそうだ。

「モンゴル料理店は増えたけど、ゲルの中で食べられるのはウチくらいだよ」

 仔羊肉の岩塩煮込み「チャンサンマハ」や、ラムと玉ねぎ、キャベツを手打ち生地で包んで揚げたモンゴル風ピロシキの「ホーショール」などが名物。後者はモンゴル力士にも好評で、

「大事なのは素手で食べること。冬は零下30度にもなる大平原では肌がカサカサに乾く。手掴みすると表面の油がハンドクリームの役目を果たすんです」

 形が丸いゲルは家族円満にうってつけの場所だとか。ならば郷に入った記者は郷に従おう。ホーショールが熱くて舌を火傷したが、心は丸く保つことにした。

 ゲルから“帰国”後は、日本の原風景を味わいたくなった。篠山には、それに適した宿があるという。

■古民家を1棟貸し

 それは全12戸の半分以上が空き家の“限界集落”にあった。古民家が朽ちてはもったいないと、1棟貸しの宿「集落丸山」として2軒を開放しているのだ。運営するNPO法人の佐古田純子さん(33)によれば、

「どれも築150年ほどですが、2009年のオープン時に、昔のよさを残しつつ改修を施しています」

 足を踏み入れると昔懐かしい土間にはモダンな黒いタイルが光沢を放っているし、居間には真っ赤なソファーが置かれ、エアコンや床暖房も完備。現代風の真っ白いバスルームも快適だが、一方で旅心をくすぐる五右衛門風呂も健在だ。

「集落丸山」。
1泊4万円+サービス料1人5000円(朝食付)
TEL:079-552-5770

 石川五右衛門みたいに「ボイルされたらどうしよう」と思ったのは杞憂で、熱くない。近くの山から猿の鳴き声が聞こえてきた。こういった自然もまた、改修しようのない遺産である。

「特集 宿泊したら自慢できる『日本の変な宿』紀行」より

週刊新潮 2015年1月1・8日新年特大号掲載

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