いまだに原稿用紙に手書き? 小説誌編集長に聞く当世執筆事情

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 昨今作家や歴史的人物の直筆の原稿や手紙が発見され話題となっています。

 今年の春には坂本龍馬直筆の手紙が偶然テレビ番組の街角インタビューから発見に繋がり、研究者・ファンらに大きな驚きを与えました。また12月に入り、夏目漱石の直筆の手紙が発見され新宿歴史博物館で公開されています。

 作家や著名人の直筆からは本人の人柄や執筆の様子がうかがい知れ、ファン・研究者にとって大変な価値を持っています。

 特に作家の直筆原稿は推敲や校正の跡が刻まれ、作品の出来上がりまでの苦悩までが表れており、貴重な資料となっています。近年生原稿をデジタル化し、図書館などで閲覧できるサービスも始まっています。

 作家のなかには執筆道具である万年筆や原稿用紙にこだわりのある人も多く、日常的に生原稿に触れている「小説新潮」編集長新井久幸さんはこう語ります。

「最近はあまり聞きませんが、昔はご自分の特注の原稿用紙を使っている方というのは結構いらっしゃいました。字詰めや紙やサイズなど、それぞれの仕事のスタイルによって違っていて、面白かったです。移動中に原稿を書くことが多い方は、持ち運びの便と、小さなテーブルでも書けるようにと、小さなサイズの原稿用紙を愛用したり。

 新潮社でも、独自の原稿用紙があって、字詰めや大きさなど、何種類かのフォーマットがあります。昔は、編集者もその原稿用紙にリードやコピーを書いていたものですが、最近はほとんど見ないですね。でも、原稿用紙はまだありますよ」

 しかし近年はワープロやパソコンの普及で手書きの作家自体が減っているという事情もあります。

「現在、手書きで原稿を書いている作家は、『小説新潮』だと一割から二割くらい、という感じでしょうか。昔は、faxから原稿がプリントアウトされてくるのが締め切り前の編集部の風景でしたが、今はメールでいただくことがほとんどなので、faxの出番もずいぶん減りました。パソコンでお書きの方が多いですが、今でもワープロ専用機を使っている方も結構いらっしゃいますし、親指シフトキーボードを愛用している方もいます。ワープロ専用機はもう生産されていませんので、壊れたときの保険にと、秋葉原で中古を買い集めたという話を聞いたこともあります」

 様々なやりとりをしていた手紙もEメールとなってしまった現在、今後ますます作家直筆の原稿や手紙は貴重なものとなってゆくのでしょう。

デイリー新潮編集部

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