ストーカーの言い分「法を犯してでも復讐する権利がある」 ストーカーは何を考えているか(2)

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 ストーカーによる陰惨で凶悪な事件がとまりません。先月だけでも東京都日野市では24歳の女性が、神奈川県横須賀市でも22歳の女性が殺害されてしまいました。どちらも元交際相手の男による凶行でした。男女問題の果てに殺人にまで至ってしまう彼らの心の闇とはいかなるものなのでしょう。

 NHKスペシャル「ストーカー 殺意の深層~悲劇を防ぐために~」でも取り上げられ話題となった、ストーカー事案に対応するNPO法人ヒューマニティ(東京都)の小早川明子理事長は、彼らの心理について「加害者は確固たる心理的動機があり、正当性を信じ込んでいる」と語ります。

 小早川理事長は1500件を超えるストーカー事案と関わり、500人以上のストーキング加害者と向き合うなかでみえてきた特徴について、近著『「ストーカー」は何を考えているか』(新潮新書)でこう解説しています。

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 加害者にはそれぞれストーキングをする言い分、動機があります。些細なことであっても、長年考え、こだわり続けてしまうような何か、頭にこびりついて意識せざるを得なくなっている動機というものが、例外なくあるものです。

 それらは「なぜ彼は私から離れたのか?」や「あの時、俺は騙されていたのではないか?」といった「疑問」や「疑念」、「相手は私に謝罪すべきである」といった「要求」が多いのですが、全て交際中の事象に対する解釈にもとづいています。

 例えば、自分以外の男性との関係を疑わせるメール、約束したことが守られないままであること、常に馬鹿にしているような態度に見えたこと、金銭上の不満など。一見、取るに足りないことのようでも、あるいはとんでもない要求であっても、そこにこそストーカー問題を解決する「鍵」があると私は考えています。

 多くの場合、加害者のこだわりは放置され続けてきました。事件が起きたら、加害者のそうした動機と心理を、「過去問」を解くように検証する必要があります。加害者は屈辱感から被害者意識を固め、ついには「法を犯してでも相手に復讐する権利がある」という認識に至っている。そうなれば事態は一気に危機的になります。殺人事件の加害者の多くには、そうした妄想的な自意識があるのです。

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 もちろん小早川理事長は被害者に落ち度があると言っているわけではありません。加害者は自分がストーカーであることに気づいていない場合が多く、自分を正当な位置に置きたがります。まるで教師のような態度で「誠意」「信頼」「道徳」「人として」といった言葉を多用して被害者を批判し、「生きていてほしくない」「会社をやめろ」「信頼関係を取り戻せ」「心の傷を治せ」などと、度を越して不可能な自己犠牲を迫ってきます。

 カウンセリングによって加害者は、自分の真の問題は相手ではなく「相手から離れられない自分」にあると気づくことで、ストーキング行為を止め、新しい人生に一歩踏み出してゆけるのです。

デイリー新潮編集部

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