県民も「だいたい合ってる」 群馬県民黙認の“グンマ”漫画

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 昨今、さまざまな「地元」が注目を浴びています。しかし「都道府県の魅力度ランキング」で最下位を取ったこともある群馬県の場合、少々状況が違うようで……。

 その認知度の低さにつけこむように、「グンマー」なる架空の群馬像がネット上で投稿され続けているのです。たとえば埼玉県とグンマーの間の“国境”を越えると裸のグンマー人が槍を構え、警備隊はどうみてもアフリカの軍隊。成人式には櫓の上からバンジージャンプを行い、砂漠の掘っ立て小屋にはグンマー県庁のキャプションが。「未開の地」「地球上に唯一残された秘境」「グンマーからは生きて帰れない」等々。事実無根で嘲笑的な群馬像が、ネット上で増殖し続けています。

群馬探検隊

 こうした悪意のある「グンマー」像に業を煮やしたのか、この3月、群馬県庁は俳優藤岡弘、さんを隊長に「群馬探検隊」を発足しました。県内各地を調査して「原住民が生活する未開の地グンマー」が実在しないことを証明するのだそうです。その過程で群馬県の自然や特産品を宣伝できる、まさに一石二鳥のプロジェクトです。

県民が黙認する「グンマ」漫画

「グンマー」と「群馬」。ネットとリアルの虚実の争いに、もう一つの「グンマ」が登場し、いま話題となっています。群馬在住漫画家による初の「グンマ」漫画『お前はまだグンマを知らない』がそれ。

 チバ県からグンマ県に転校した主人公が体験するさまざまな「グンマ」の真実。朝一番から受けた「起立、注目、礼」の洗礼。トチギのスパイと疑われ、試される上毛かるた「つる舞う形のグンマ県」。他所者(よそもの)が食べれば死に至るグンマ人のソウルフード「焼きまんじゅう」などなど。

 事実無根の「グンマー」と違い、群馬の文物、習慣を元にした「グンマ」漫画には県民も「だいたい合ってる」と黙認せざるを得ません。それどころかむしろ大いに愉しんでいるようで、くまざわ書店JR高崎店の今井さんによれば「305冊仕入れましたが10日で完売しました。長年コミックスを担当していますがこんなこと初めてです」とのこと。

 ちなみに作者の井田ヒロトさんは、群馬県で700年続く旧家の末裔。脈々と流れる県民の遺伝子が「グンマ」漫画を描かせたのかと思いきや、実はそうではないと仰る。「生まれたのは神奈川で、群馬に来たのは中学入学のとき。だから群馬の変わったところ、おかしいところが分かるんですよ。だって生まれたときからずっと群馬だったら、他所と何が違うのか気づきませんから」。


デイリー新潮編集部

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