「国を守る」とは何か 山本一郎/私の名作ブックレビュー【書評】

国内 政治

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「国防」について、石破茂という一線に立つ政治家が、自分の言葉で語っているのが本書。単純な軍事力での抗争を思い浮かべがちな日本人に、一から安全保障の本来の意味を解き明かしている。国は誰かが守るのではなく、その国を支える国民一人ひとりの意思が作用すること、敵の侵攻を防ぐための自衛隊がどうあるかだけでなく、政治家や官僚が作用しあって適切に対処する必要があること、さらには、誰が敵となるのかさえ、国の行動によって変わること。これが石破氏の説く広義の「国防」の意味である。

 本書では、イラク戦争や北朝鮮問題などの個別事例がメインに語られているが、石破氏が持っている問題意識についてはいささかもブレることなく語り尽くされ、またそれは、彼の政治活動にも繋がっていると思われる。

 北朝鮮の挑発行動については現在でも凄まじい議論が国内外で行われている。ミサイル発射等の具体的危機にどう対応するのか。北朝鮮に攻撃の意思ありと判明したとき、自衛隊は先制攻撃ができるのか。さらに、顕在化したサイバー攻撃による国民生活へのリスクにも言及されており、まさに本書は年代を超えて読まれるべき内容になっていると言えるであろう。

 我が国の安全保障政策の第一人者が持つ問題意識と信念の言葉の重さを感じるとともに、自分はどうすべきかと、沈思黙考してしまう余韻のある良書である。

山本一郎(やまもと・いちろう)
1996年慶応義塾大学法学部政治学科卒。イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社代表取締役。近著に『リーダーの値打ち』(アスキー新書)など著書多数。
オフィシャルブログ「やまもといちろうBLOG」、Twitter:kirik

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